INTERVIEW

【対談】巽(XANVALA)×綴(DRUGS)――“哀”と“怒”から生まれる激情が衝突。各々が抱く、ヴォーカリストとしての「個」とは?

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XANVALAの2MAN LIVE SERIES“XANVALA VERSUS”で、DRUGSとの共演が決定。4月17日に池袋EDGEで行われる公演を前に、両バンドのヴォーカリスト対談が実現した。6周年を迎えたばかりのXANVALAと、“ドリームバンド”として昨年12月に始動したDRUGS――巽と綴に語ってもらったのは、個としての表現と、バンドのフロントマンとしての在り方。それぞれが抱くヴォーカリストとしての美学を感じながら、2人の言葉がライヴ空間に表れることになるであろうツーマンライブに期待が高まる。



――今回は、“XANVALA VERSUS”での共演に先駆けたヴォーカリスト対談となります。まずは、巽さんと綴さんの関係性からうかがってもいいでしょうか?
綴:最初は、コロナ前くらいのタイミングだったかな? “XANVALA結成します”くらいのときに、呑みに行ったんですよ。
巽:そうですね。そのときが“初めまして”でした。
――ちなみに、綴さんと70.さん(XANVALA / Ba)は以前同じバンド(VanessA)で活動していたこともあって関係性は割と見えていたのですが、今お話に出た呑みの場に70.さんも?
綴:いましたね。 


――そのときが“初めまして”だったとはいえ、お互いの存在は認知していたとは思うのですが……。
巽:もちろん。MEJIBRAYのライヴも結構観に行ってたんで、初めは「わ、本物だ」と思って緊張してました。でも、綴さんは初めから優しかったんで、普通に楽しんでましたね。
綴:もともと、XANVALAを組む前にセッションバンドとして活動していた段階から、ライヴは観ていたんですよ。だから、「ヴォーカル、この子なんだ」っていう認識ではあって、初めから“歌が上手い人”っていう印象がありましたね。安定もしてるし、ちゃんと口から音源の人だし、あと背も高いから、「いいな」って。


――そこで、綴さんとしては〈tzkwym〉というソロ活動と並行する形で、昨年〈DRUGS〉を結成したというところですけれど。そもそも、綴さんはご自分がまたバンドをやると思っていました?
綴:いや、思ってなかったです。正直、バンドやるのってかなりエネルギーを使うわけですよ。それもあって、「バンドはもう一生できない」と思っていたからtzkwymを始めたんです。だから、よっくん(Yoshiatsu・DRUGS / Dr)に呼ばれて「綴さん、バンドやった方がいいですよ」って言われたときに「メンバー集めるの大変だし、嫌だ」って言ったら、「集めます!」って。そこに来たわっくん(進藤渉・DRUGS / Ba)は、「久しぶり。で、どんなバンドやるの?」ってもうやる気でいるし、わっくんがタイちゃん(タイゾ・DRUGS /Gt)に「あなたは音楽しかできないでしょ?」って電話したら、「そうだね」って来たという。


――それが、DRUGSの成り立ちだったんですね。
綴:そう。それで「あ、バンドやるんだな」って。tzkwymに関してはソロだし、ぶっちゃけ何をやってもいいと思ってるから暴走してるんですけど(笑)。DRUGSの方は、よっくんを筆頭に、「こうしていこう」っていうレールの上でメンバーが全員一致で動いているという感じなので、“DRUGSの綴”と“tzkwymの綴”は完全に別物ですね。歌詩も、全然違うことを書いてます。
――そして、XANVALAは先日6周年を迎えましたけれど、それこそ巽さんとしては綴さんとの初対面のときから考えても変化があったと思うんです。
巽:だいぶ違いますね。なんなら、綴さんに会った日の前後でも違う人でした。


――何があったのか、すごく気になるんですけれど!?
巽:結構、熱く話をした記憶がありまして。それまでの自分って、結局“ヴィジュアル系バンドとは”とか“ヴォーカリストとは”っていう概念が凝り固まっていたんですよ。頭では“バンドや音楽は自由だ!”ってわかってはいたんですけど、なんて言ったらいいですかね……『ジョジョ(の奇妙な冒険)』の第5部に“「言葉」でなく「心」で理解できた!”っていうペッシのセリフがあるんですけど、そういう感覚にさせてもらえたというか。割と、心得的なものを教えてもらった気がするんです。


――それからというもの、6年間の活動の中で巽さんなりのヴォーカリストスタイルが確立されてきたのは事実ですよね。例えば、ライヴでの言葉の投げかけ方だったり、『Stray』(『INDRA-EP』収録)ではギターヴォーカルで歌ったり。だいぶ自分なりのアプローチができている印象ですけれども。
巽:そうですね。自分なりに噛み砕いてきて、今があると思います。ただ、ギターに関しては、もともと弾けなかったし今も下手なんですけどね(笑)。でも、“俺がやりたいからそうした”っていうだけで、ある意味そういう衝動的なところに、自分の音楽に対する原点が表れているのかなとも思います。


――余談ですけれど、綴さんはソロ活動を並行されていることも踏まえてうかがうと、巽さんはこれまでソロという形態でステージに立ったことはなかったですか?
巽:ないですね。俺は、1人じゃ絶対にできないっす。なんか、占いで「あなたは1人でやったら終わる」って言われたんですよ。


――なんと!? まず巽さんが占いに行くということ自体が衝撃なので、詳しくお願いします。
巽:いや、「行ってみるか」と思って(笑)。でも、1ミリも信じてないですけどね。そのときに「この先1人でやりたいと思う時期が来るけど、そこで1人になったらマジでうんともすんとも跳ねないから絶対にやめろ」って言われたんで、「じゃあ、やめとくか」って。俺は曲も作れないし、誰かと一緒に何かを作る方が向いてると思うんですよね。あと俺、人付き合いが大好きなんです。
綴:あ、そこは僕と真逆ですね。
巽:人と喋るの、めっちゃ好きなんですよ。


――綴さんも、ご自身のスタイルに変化を感じる部分もあったりしますか?
綴:どうですかね? 自由にできないこともたくさんあるということを理解した上で、“自由であること”は大事だとは思いますけど。ただ、コロナ禍以降で自分がステージに立つときに考えるようになったのは、やっぱり「自分の良さを一番の武器にしなきゃいけないんだな」っていうことだったんですよ。第三者から見たいいものと、自分が思っているいいものってちょっと乖離してたりするから、全ての意見を聞いた上で、自分の良さや武器を120%出している状態がデフォルトであるべきだと。その状態でやっと「これが綴だよね」って人から言われる、みたいな。そういうことって、歌をうまく歌うとかかっこいいステージングをするとかっていうことよりも大事なことなんじゃないかなって思ったんですよね。


――コロナ禍で自分を見つめ直したという話はよく耳にしますけれど、綴さんも例外ではなかったんですね。
綴:コロナ禍はデカかったですね。XANVALAも、コロナ禍でもずっと配信でライヴをやってたじゃないですか。「あ、今日XANVALA無観客ライヴやってる。観よ」って、観てましたよ。この間の6周年のライヴはいけなかったんですけど、それまでのツアーファイナルはずっと観に行ってたんです。そのときの感情としては、「羨ましいな」が一番強かったんですよ。コロナ禍を頑張って乗り越えて、Zepp Shinjuku(2024年6月)へ観に行ったときは「とうとう仲間がZeppに行ったな。いいな」って思いながらも、正直なところ心の片隅では「ぜってぇ殺す!」って思ってたところもあって。ステージでしか出てこない綴の部分がここ(心の中)にいましたね。


――沸々とライバル心も抱きつつ。巽さんとしては、恵比寿ザ・ガーデンホールで行われたXANVALAの6周年のライヴを終えた率直な感想としてはいかがですか?
巽:ライヴ自体はうまいところにまとまったな、と。ただ、やるたびに「もっとこうしなきゃ」っていうのが出てくるし、もう勢いでバッと行ける活動年数でもなくなってきたので、ここからまた地盤を固めて自力をつけて、改めて着実に上がっていきたいなと思っているところですね。


――現状に満足しないというのは素晴らしい向上心ですけれど、あれだけ完成度の高いライヴをやった上でどういったところに“もっとこうすれば”と思ったんでしょう?
巽:今思えば、もうちょっと自分の内面を出せる方向性でもよかったのかな、っていう気はしていますね。バンドの周年をみんなでお祝いするというのもメチャクチャ大事なんですけど、とはいえ“周年”っていう部分が結構全面に出ていたと思うので、もうちょっと自分を出してもよかったのかな、と。


――そういう風に思えるのも、自分の考えを素直に出せるようになった今の巽さんがあってのことかもしれませんね。
巽:そうですね。自分のステージの在り方次第でその日のライヴの良し悪しが決まってしまうと思うので、どうしても置きに行ってしまうところはあるんですよ。でも、ロックバンドをやっている以上「もっとハジけてもいいのかな」っていう思いもずっとあります。


――その中でも、6周年を迎えた現状の気持ちに一番マッチした表現ができた曲を挙げるとすると、どちらになりますか?
巽:『誰が為の幸福論』ですかね。初期の曲なんですけど、周年っていうのも相まって「(セットリストに)入れてよかったな」って、やりながら思いました。歌ってるうちに、自分が書いた言葉ながらに「今も変わってないな」って思えたし、「続けてきてよかったな」っていうのが重なったんですよね。そういうことも踏まえて、やっぱり一番デカいなと思ったのは、6周年をメンバーチェンジなしで迎えられたことかな。自分たちのことながら、それは「いいな」と思いました。
綴:メンバーと会話できるって、幸せだからね。DRUGSもコミュニケーションを取りながら活動できてるので、会話って大事だなって思う。


――今のお話を踏まえると、ヴォーカリストとしての“自分”とバンドの顔としての“自分”のバランスは難しい部分もあるのでは?と感じました。
綴:僕はもう、“自分”だけ大事にしてるので。DRUGSはまだ曲数が少ないから選択肢が限られるところはありますけど、「周年だからラストはこうした方がいい」って考えるのもすごくわかるし、理にかなった選択なんですよ。でも、そのとき歌いたくない曲は歌いたくない。昔で言うならば、MEJIBRAYのライヴのラストにみんなが『メサイア』を待っているのは理解しているけど、僕自身が『メサイア』を歌えるメンタルじゃなかったら(セットリストに)入れてなかったんです。だから「今、これを歌いたい」っていうのも全部、自分次第なところはありますよね。
巽:その『メサイア』の話は、初めて会った日にも話してもらいました。それを聞いて「はぁ……(感心)」ってなって。
綴:綴の鉄板ネタです(笑)。


――確かに、“歌う”というアクションにはメンタルが一番影響するでしょうから。
綴:うん。ステージで嘘つきたくないですからね。大丈夫じゃないのに「大丈夫」って言いたくないし、だから大丈夫じゃないときは「大丈夫じゃねぇ」って言う。DRUGSのセットリストに関しては、よっくんから「まず、つーくんの考えで1回出して」って言われて出したものに対して、「これが気持ち的にベストなら、その並びでいきましょう」っていう風に決まっていくんですけど、しっかりヴォーカルの意見を尊重してくれるんですよね。


――Yoshiatsuさんもヴォーカリストの一面を持っているからこそ、理解し合えるところがあるのかもしれないですね。
綴:そう。よくわかってくれるんですよ。実際にライヴをやって思ったのが、ヴォーカル的に一番来てほしいタイミングでドラムが入ってくれるんです。私のボルテージがマックスのところで来てくれるから、そこはもう「ヴォーカルの感性だな」と思うし、気持ちがいいんですよね。それもあって、同期を入れるという発想がメンバー全員になかったんですよね。だから今の段階では、「今後も同期はいらん!」と思っています。


――この機会に、お2人には作詞 / 作詩についてもうかがいたいと思うのですが、先ほど綴さんとしてはDRUGSとtzkwymでは全然違うことを書いているとおっしゃっていましたけれど、DRUGSでは総じてどんなことを書かれているんでしょうか?
綴:ずっと、怒ってます。今の綴の、一番の尖りはDRUGSだと思いますね。やっぱり、2017年までの綴とは似て非なるものになっていて。意識してそうなったわけじゃないんですけど、ステージに立ってみたら「人間としてだいぶ変わったんだな」と思ったし、気付いたら獣みたいになってました(笑)。


――その、“怒”を呼び起こしている要因は、いったい何なんでしょう?
綴:サウンドがヘヴィーで、同期がないメンバー4人だけの音でやっているからこそタイトだし、デモをもらってメロを作ったりみんなの演奏に合わせながら歌ったりすると、自然と怒りのメロディーが出てくるんですよ。結構、曲の雰囲気で「これはこういう歌詩を書くだろうな」っていうのが出てくると思うんだけど……。
巽:出ますね。
綴:それが、なんかイライラしてるんですよ。


――きっと、メンバーの気合いゆえの音の強さから呼び起こされるものかもしれないですね。
綴:きっと、そう。歌詩も、「あなたの思う、今書きたいものを書きなさい」って感じなんです。まあ、「こうしろ」って言われてもその通りには絶対書かないですけど(笑)。今までも歌詩に関して自由じゃなかったことはないですけど、ある意味「自由に書いてください」っていうことに対する反発でもあるのかなとも思いますけどね。
巽:俺の場合は、今でもすんなり書けたり書けなかったりとまちまちですけど、最近だと『アイライナー』の歌詞はすんなり書けましたね。


――綴さんの“怒”に対して、巽さんがXANVALAの歌詞における感情を言葉にするならば、どう表します?
巽:なんでしょう……でも、大方ポジティブではないと思います。たぶん、6年間ずっとそうですね。“怒”もあるとは思うんですけど、どちらかというと“哀”の方かな、と。哀しいからこそ来る反骨心みたいなものが多かったりするし、時にはそれすらも通り越した“諦め”みたいな歌詞もあるので。


――確かに、“哀”や冷静な状況把握から思考を変換させていくというものが多いかもしれませんね。先ほどお話に出た『アイライナー』も、コンプレックスからメイクで武装していくといった内容ですし。
巽:そうですね。もちろんリスナーが好きなように解釈してもらえればいいと思っているんですけど、初期の頃に比べて比較的自分のことを歌詞にできるようになったとは思います。


――“怒”と“哀”、ベクトルとしては似ているところがありつつ、それぞれの根幹にあるものとしてニュアンスが異なるのは興味深いところですね。さて、DRUGSは2月17日にSpotify O-WESTでワンマンライヴがあって、そこが2度目のライヴになるんですよね?(※取材は本公演前)
綴:そうです。僕が最後にWESTに立ったのって、2016年にやった(MEJIBRAY主催で)DADAROMAと対バンしたときだったんですよ。それぶりに立つWESTで、なんならよっくん後ろにいるし(笑)。去年の12月19日にやった、1回目のワンマンがメチャクチャ良かったんですよ。サイヤ人みたいなオーディエンスがウォール・オブ・デスをするんですけど、よくあるヴィジュアル系の雰囲気じゃなくて、本当に死人が出るかと思ったくらいの勢いで。


――だいぶハードですね……。それもまた、DRUGSの音楽性にリンクしている部分もありますけれど。そんなDRUGSとの2マン、Λ(※XANVALAのファンの呼称)の皆さんも一致団結ぶりでは負けていないんじゃないかと。
巽:この前、NICOLASとツーマンツアーを回ってたときに、フロアの様子がどんどんおかしくなっていったんですよ。これでDRUGSとやったらまた違う感じになるのかなと思うと、それが楽しみですね。結構、どことやっても順応できると思うので。


――では、ツーマンに臨む現状のXANVALAの強みはどういったところになるでしょうか?
巽:楽曲の多さとメンバーの人数!
一同 (笑)
巽:まあ、冗談として(笑)。この先ツーマンが結構予定されてるんですけど、やっぱり相手にとって一番嫌なスタンスで行くっていうのが意気込みとしてあって、「ここでこういうのをやられたら相手はちょっと嫌じゃない?」っていう対策を一バンドずつ考えるんです。それを今から考えていくことにはなるんですけど、DRUGSとのツーマンの日は1つだけやりたいことがあるんですよ。


――なんでしょう?
巽:きっと誰も知らないと思うんですけど、ウチの曲で1曲、音源に綴さんの声が入ってる曲があるんです。それを、当日バラそうと思ってます!


――ええ! すると、綴さんがXANVALAのレコーディング現場に行くこともあったんですね?
綴:「ディレクションに入ってほしい」って言われたことがあったので。ヴォーカルレコーディングの前日に70.くんと呑んでて、「一緒に行こうぜ」って言われてついて行ったんです。
巽:レコーディングに向かってる途中の駅のホームでドン!ってぶつかられて、「ヤバい人きた」と思ったら70.と綴さんでした(笑)。なので、その1曲をもし可能だったら一緒に歌えたらいいなっていう感じですね。


――すごく楽しみです! XANVALAのスタンスが知れたところで、DRUGSはいかがですか?
綴:そんなこと言ったら、こっちはバラードでぶっ倒れて終わってやりますよ! で、後ろのドラムから殺人ピエロ(Yoshiatsu)がバット持って立ち上がるっていう……。


――そのあと、やりづらいですねぇ……(苦笑)
綴:殺人ピエロが、「ぜってぇ殺す!」って言ってましたから(冗談)。DRUGS的には、このXANVALAとの2マンが3本目のライヴで、しかも初の対バンになるんです。その相手がXANVALAですごく光栄ですし、本当に嬉しい。楽しみですね。


取材・文 平井綾子
写真 Kiwamu Kai