INTERVIEW

llll-Ligro-ロングインタビュー【後編】

llll-Ligro-


 

4年間に及ぶ活動休止期間を終え、ついに再始動を果たしたllll-Ligro-。Full MVが公開された新曲「INVICTA」は、新メンバーGuitar.Jesse、Bass.羽鳳を迎え入れた新生llll-Ligro-の「進化」を雄弁に物語る大曲となっている。
活動休止期間中、果たして彼らはどんな思いを抱いていたのか?再始動までの道のり、そして「INVICTA」に込められた思いとは――?バンド史上初となるロングインタビューを通し、メンバーそれぞれの胸中に迫る。

取材・文 清水大輔
 

「INVICTA」の「意図」


――新曲「INVICTA」では、約8分という大曲に挑まれていますね。
Jesse 挑んだの?(笑) 生まれてきた形がこれだったんじゃないのかな。
kazari 挑んだという意識は誰にもないと思いたいんですが(笑)。理由という観点から話すならば、理由は特にないです。再始動でまず聴いてもらう音だったので、新しさと、昔から持ってる色と、今なら表現出来るだろうと思ったことを素直にやろうと思っていました。なので、この曲がたとえ4分であっても同じ姿勢で挑んでいたと思います。

――制作開始から完成までの経緯を伺えますか?
kazari 5月か6月にイントロが出来たんです。
ヒナタ 6月だね。その時点で僕が聞かせてもらって、「またすごいものを出してきたな」と。
kazari 個人的にも結構きてるなって思ってたんですけど、彼がかなり気に入ったみたいだったのでそこから構想を練り始めて、ワンコーラス出来た時に曲出しして。
ヒナタ 初めて2人に聞いてもらう段階で、「この曲でMV撮りたい」って話をしたのを覚えてます。
Jesse この曲も、何回も形が変わったよね。
羽鳳 「9分くらいになりそう」って聞いたときは失神しかけました(笑)。
kazari 骨組みを作り始めて、気が付いたら9分になって10分になって(笑)。最終的には8分ないくらいにまとまって帰ってきたので、「おかえり」って感じです。
Jesse 圧倒的にかっこいいものを作りたかったし、再始動した時に「この程度のバンドか」とは絶対に思われたくなかったので、みんな死ぬ気で試行錯誤してました。

――それほどの思いが込められた曲なら、音楽的なこだわりも伺いたいですね。まず、llll-Ligro-の楽曲制作の流れを教えてください。
ヒナタ 最近の制作は、全員で集まったり、僕とkazariの2人でデモを整えるところから始まります。その段階でどうしたらもっと良くなるか意見を出し合って、ある程度の形まで作り直すんです。主に、構成やメインのフレーズがそこで決まることが多いですね。その後、各自持ち帰って自分のフレーズを作り込むというのが大まかな流れです。そこからはllll-Ligro-のメインコンポーザーであるkazariに、フレーズの良し悪しやコード感などを踏まえて採用か再提出かの判断を委ねています。各メンバーのやりたいことや持ち味をできるだけ生かしつつ、楽曲として成立させる重要な役ですね。すべての段階で全員が自由に意見を言えるので、彼の苦悩は計り知れません。とんでもないことを言い出すメンバーもいますからね。主に僕ですが。
kazari 僕はもう慣れました。楽器的な観点じゃない発想って貴重ですし、主観じゃないところにヒントがあることって意外に多いので、助かる部分もあるんですよね。だから面白いですよ、音楽って。

――ではkazariさんから伺いましょう。「INVICTA」の制作ではどんなことを担当されましたか?
kazari 原曲と大まかなアレンジ、ストリングスなどです。

――メインコンポーザーとして意識したことはありますか?
kazari 新しい風をどれだけ吹き込めるか、を常に考えていました。さっきお話しした通り最初にイントロが出来まして、まず「この流れでゴリゴリのメタルになるのはありがちだから避けよう」って決めたんです。llll-Ligro-はヘヴィな要素もありますけどそれだけではないバンドだと思ってましたし、それだけのバンドになってしまったらつまらない。なので、ゴリゴリと空気感を共存させることをテーマにしました。そしてクリーンと変な音で絡み合う次のセクションが完成して、キモとなるコード進行が出来てからは、いかに自然な流れで聴こえるように配置するか、その起承転結や曲の発展のさせ方を考えました。かなり粘りましたけど、「ただ長い曲」にならないように整合性と必要性を意識して作りましたね。

――あまり耳にしないコード進行が多いですが、そこにもこだわりがあるんでしょうか。
kazari マニアックなものをマニアック感を出さずに、しれっと入れ込むのが趣味ってだけですね。音楽的には、今のこのシーンにはない可能性を提示したかったんです。分かりやすいコード進行が多い中での差別化という意識もありましたし、何よりこの手の進行はヒナタ氏の声に合うと思いまして。結果的にはメロディにかなり助けられましたが(笑)。

――メロディを担当されたのはやはりヒナタさんですか?
ヒナタ そうですね。メロディと歌詞、同期の一部は僕が担当しました。

――クリーンとシャウト、コーラスが複雑に絡み合った仕上がりになっていますが、どうやってメロディ作りを。
ヒナタ 思い付いたものを入れ込んでいって、不要なところを削った状態です。

――メロディを作る際に意識していることはあるでしょうか。特に「INVICTA」ではどうでしたか?
ヒナタ セクション毎に、楽曲の一部になるところなのか、楽曲を引っ張っていく象徴であるべきなのかは常に意識しています。「INVICTA」は、やはりサビですかね。1サビと2サビで楽器隊のリズムが大きく違うので、そのどちらにもはまるように作りました。
kazari 彼は結構Aメロとかサビっていう概念じゃない感覚で声を入れてくるんです。だから曲は難解な顔付きになるんですけど、きちんと筋が通った曲になるから不思議ですよね。

――確かに、「INVICTA」の声も他にはない仕上がりになっていますね。Jesseさんはいかがでしょう。
Jesse 僕は、基本的にはkazari君の考えたフレーズをそのまま弾きました。良いものは変える必要がないと思っていたので。僕はどちらかというと、フレーズを自分のものにすることに専念していましたね。RECで1200回も弾いたので、終わった時はガッツポーズでした(笑)。

――苦労がうかがえるエピソードですね(笑)。ギターの音色が非常に多い楽曲ですが、音作りの際にこだわったポイントは。
Jesse イントロとアウトロに出てくる高いアルペジオの音があるんですけど、あれは「冷たい感じ」というリクエストを元に作ったんです。結構難しくて最初は戸惑ったんですけど(笑)。ピッチシフターを2つかけて、その他空間系エフェクターをとんでもないところにセッティングしてます。
kazari 他にもふわふわした音で彼がフレーズを作ってくれたセクションもありますし、結構ギター隊はエグい音を使ってますね。

――羽鳳さんはどういった形で制作に携わりましたか?
羽鳳 最初は邪魔にならないようにフレーズを考えてたんですけど、最終的にはやりたいことをどんどんぶち込んでもすんなりOKが出るようになりましたね。「INVICTA」の制作を通して、llll-Ligro-のメンバーとして自分が出来ることが見えてきた気がします。

――今後が楽しみになる言葉ですね!かなり渋いところにスラップが入っていますが、その発想はどこから出てきたんでしょうか。
羽鳳 大きなことを言える身分じゃないですけど、個人的にスラップには3種類あると思ってるんです。ファンクのような主題となるもの、パーカッションのような本来のベースの役割からは少し外れたもの、もう1つは完全な飛び道具。「INVICTA」のあそこのスラップは、完全な飛び道具まではいかず、かといってフレージーでもないんですよね。指で弾いているものをスラッピングしたら出来上がったものなので、「スラップがしたい!」というよりはあのフレーズをどうしても目立たせたくて、結果的にああなった感じです(笑)。
kazari スラップ以外にも要所要所でものすごい動きをしてますよ、羽鳳は。

――どのパートも聴きどころが満載ですね。歌詞についても伺いたいのですが、ヒナタさん、ずばり「INVICTA」の歌詞のテーマとは。
ヒナタ 道化を演じる者の物語です。一種の予言とも言えるかもしれません。

――歌詞を拝見して、脚本のような構成になっていることに驚かされました。
kazari そこは僕もシビれましたね。
ヒナタ 曲が映画のように場面展開をしていくので、それに沿って、より引き出すためにはどういう描き方が正解だろうと考えた結果ああなりました。

――タイトルコールも印象的ですが、やはり意図があってのことでしょうか。
ヒナタ 「INVICTA」という言葉の意味はある種両極端にとらえられるので、そこまで聴いてもらった上で、聞いた人がどう判断するか、それを預けようと。脚本としては、歌詞中の「INVICTA」で終劇なんです。その後の「口上」はエンドロールなのかオープニングなのか、何が終わり、始まっていくのか。そういったところを考えるのも、楽しみ方の一つであってほしいと思います。


 

MV撮影秘話




――楽曲全体にこだわりが詰まっていることが分かりますね。MVでお気に入りのシーンはありますか?
羽鳳 4人が並んで演奏してるところを、横から撮ってもらってるアングルです。1列に並んで同じ方向を向いて……いいですよね。
ヒナタ 僕も同じです。バンド的には心情も状況もネガティブに振り切ってるんですけど、それでも進んでいこうとする意志というか、泥臭い力強さを感じます。
Jesse 僕はヒナタくんの顔が変わっていくところですね。映画のワンシーンのようで最高です。今時なかなかいないですよね、こんな役者魂を持った人。きれいに見せたがる人が多いけど僕はそういうのじゃなくて、もっとリアルなものが好きだから。心に引っ掛けてくる感じ。
kazari 僕も並んでるシーンとヒナタ氏が顔をグチャッとさせるシーンが好きなんですが、個人的には一瞬入る鏡のシーンでの自分の横顔がかわいく映っててちょっと嬉しかったです。チャーミングです。僕。

――では、撮影時に苦労されたことは。
羽鳳 絶対みんな火と煙でしょ(笑)。
ヒナタ 酸素が足りなかったですね。室内で火を使っていたので、暑い上に空気が薄くて悪いんです。その後に撮った屋上のシーンでは汗が冷えて寒いし、風が強かったのでうまく呼吸が出来なくて。
羽鳳 僕でも真っすぐ立っていられないくらい風が強かったので、kazariさんとか吹っ飛んじゃうんじゃないかなって思いました(笑)。2人とも身長がある分風を受けるから、フラフラでしたよ。
kazari 僕は羽鳳の想像通り空中で移動しましたね。あたしゃエスパーかと。普段からパフォーマンスでよく回ったり飛んだりするんですが、どうも着地点が腑に落ちないことが撮影中だけで2、3回ありまして。そこはもれなくカットされてるので、想像の範疇で楽しんでください(笑)。
Jesse 僕はザクロ丸かじりの時間が長かったことですね……ザクロの皮は渋くてきつかったです(笑)。
kazari Jesseはアップもあったから2倍きつかったよね(笑)。僕は移動が大変だったのと、ソロカットを撮る時に僕が希望した場所にお化けがいたらしくて。そこで撮るか撮らないかの自分の中での葛藤が大変でした。

――それは穏やかではないですね……。
Jesse ヒナタくんとまったく同じタイミングで見たんですよ……。
ヒナタ 階段の横の四角いとこね。
kazari ヒナタ氏は「気持ち悪い」って近寄らないしJesseは完全に見えてるし、お前ら何やねんと(笑)。悔しいので、羽鳳にお化けがいた風な演技をずーっとしてました。そこを撮って欲しかったくらいです(笑)。
羽鳳 僕は「みんな何びびってるんだろう」って思ってました。全然怖くなかったですしね、本当に。撮影場所がもともと病院だったって聞いたときも「へーそうなんだー」って感じでしたね。
ヒナタ 決して1人で移動しませんでしたけどね。羽鳳くん。


 

再始動にあたっての「踏み絵」


――「INVICTA」が完成した今、楽曲に対してどんな思いを抱いていますか?
ヒナタ どう転ぶかな、と。今はそれだけです。
Jesse この曲は生まれたばかりなので、これからどんどんライブで成長していくんだろうなと思います。
羽鳳 聴いていると本当の意味でみんなの魂みたいなものを感じるので、聞き手側までこの熱が冷めないで届くことを祈ります。
kazari 全員が全員頑張って生み出した過程も知っているから、そういう意味で「やっと出来た」っていう愛着と、やっと届けられた喜びは大きいかもしれません。ただ本当に屍になる勢いで取り組んだので、俺の屍を越えてゆけ、と個人的には思います(笑)。

――llll-Ligro-にとって、「INVICTA」はどんな意味を持った曲だと思いますか?
kazari おそらくという言い方しか出来ないのですが、この曲はllll-Ligro-の「踏み絵」的なポジションじゃないかと思います。「INVICTA」で新生llll-Ligro-に触れてもらって、そこでもう一歩こちら側に踏み込んでくるのか、「違う」と思うのか、その判断を委ねる楽曲になっている気がするんですよね。何せまず音楽が好きでいろんな音楽を聴いてる人でも、この長さはあんまりなじみがないでしょうし。でも、僕は「INVICTA」を聴いていても長さは全然感じないんです。メンバーも同じ感想を言ってくれたので、まずは長さと戦っていただいて、いろいろと問う楽曲になっているような気がしています。



 

「終わりの始まり」に向けて


――ちなみに、「INVICTA」のリリース予定は。
ヒナタ 近いうちにお知らせできるのではないかと。
kazari 水面下でいろいろしてるので、まあ、そのうち。

――期待が膨らみますね。今後の活動について決まっていることはありますか?
ヒナタ 詳しくは言えませんが、堅実にやっていけたらと思っています。メンバーはもちろん、応援してくれる方々にもちゃんと納得してもらえるような形で進んでいきたいですね。

――「堅実」な活動とはどういうものだと考えていますか?
ヒナタ 無謀なステップアップや路線変更ではない「次」を提示することですね。僕らが提示していくものは、「今」を超え続けなければならないんです。例えばそれが楽曲なら、極端な言い方かもしれませんが、どんな曲でもいつかは飽きられてしまう。少なくとも、曲を聞く回数は時間とともに減っていく。それは仕方ないことなんですよね。それに対してバンド側が出来ることは、また時間を空けて聞いた時に古く感じないような、何度聞いても新しい発見を贈れるような楽曲を作ることだと思っています。楽曲制作以外の面でも、「次」もその次もそういった衝撃や驚きを提示していきたいですし、それが「llll-Ligro-であること」から外れないようにやっていきたいですね。とても大変ですけれど。

――バンドとしても、ファンにとっても理想的なあり方ですね。3月には再始動ワンマンの開催が決定していますが、「THE BEGINNING OF THE END」というタイトルの意図は。
ヒナタ そのままです。終わりが始まります。このバンドがいつか迎える最期の瞬間に、何も悔いを残したくない。「次」はない。これが最後になるんだという戒めと、決意を。

――バンドにとって大きな節目になりそうですね。どんなライブにしたいと考えていますか?
Jesse 何度も言うようですが、llll-Ligro-は今のシーンに絶対に必要なバンドです。その意味を、答えを、示せたら良いなと思っています。
羽鳳 長く語り継がれていくようなライブにしたいです。演奏のレベルはもちろんのこと、客席まで含めた一体感や空気感も全部心の底に染み付いて、ずっと残っていくような。機材トラブルだけはないように、100万回くらい確認したいと思います。
kazari 僕は、ミュージシャンがめざすべきなのは音楽表現だけで魅せきるステージだと常々思っています。なので、意識してるのはそれだけですね。観て、聴いて、触れた人すべてに何か残せるような始まりのライブにしたいです。
ヒナタ 今までとこれからをつなぐものにしたいですね。メンバーが変わったので、ほとんど別のバンドになったと感じてしまう方もいると思うんです。正直僕らもゼロからのスタートだと思っていますし、そういう意味では過去にすがっていられない。例えば今後バンド名が変わって、規模が変わって、楽曲の色が変わったとしても、僕らの居る場所をイコール自分の居場所だと思ってもらえたら、全員を連れて行けたら、それが一番の理想じゃないですか。難しいですけどね。どんな形になってもバンドの核は何も変わらないことを、少しでも伝えられたらと思っています。

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