REPORT

愛沢絢夏、誕生日に主催イベントを開催。彼女はこれから声帯手術へ。僕らはずっと帰ってくる場所を守り続けるから。「お帰りなさい」と主(愛沢絢夏)を迎えるから。

 

 10月25日は、ロックシンガー愛沢絢夏の誕生日。ここ2年ほど彼女は、誕生日に主戦場と成す東京を舞台にワンマン公演を行ってきた。でも今年は、全国各地を舞台に活動を続けてきた中で繋がり、絆を深めてきた仲間たちと一緒に誕生日を祝おうと、イベント「愛沢絢夏BIRTHDAY LIVE「LIVE!LIVE!LIVE!」という形を取り、自身の誕生日を華やかに彩るスタイルを選択した。そしてもう一つの理由として、喉に出来た「声帯ポリープ」の除去手術のため、この日を手術前最後のライブにすることを決めた。術後はふたたびライブ活動を再開するとはいえ、数ヶ月後の復帰となるだけに、この日のイベントはどうしても彼女自身が記憶に熱く刻みたい内容にしたかった。舞台になった渋谷DESEOに集った仲間たちは、愛沢絢夏を筆頭に、てのひらえる/MARKET SHOP STORE/Unwave/キャンディホリック/RagDöllzという面々。当日の愛沢絢夏のライブの模様を、ここに伝えたい。

           

愛沢絢夏

 

 仲間たちが場内に作りあげた熱気のバトンを受け取り、観客たちの前へ姿を表した愛沢絢夏は、みずからの歩みを噛みしめるように。でも、何時もの愛沢絢夏らしく、思い切り感情を爆発させながら、込み上がる熱い気持ちのままに「LIFE」を歌いだした。小さい頃から胸の奥底に渦巻いていた感情を今でも追い続けていることを満員の観客たちへ示すように、これが愛沢絢夏の生きざまや生き方だと吐き出すように、何時ものよう全力で歌声をぶつけていた。この感情は消えやしない、誰にも消せやしない。それを示すように、愛沢絢夏は力強く声を荒らげていた。 

 駆けだした演奏へ飛び乗り、いや、愛沢絢夏自身が演奏を引っ張りながら全力で駆けるように「優しい人よ」を力いっぱいに歌いあげる。フロア中から突き上がる無数の拳とエール。その様へ思いきり手を伸ばしながら、彼女は声が枯れる勢いのまま力の限り歌を届けていた。そう、「今だけは、この声を君に届けたい」んだと心で叫ぶように…。その想いへ答えるよう、フロア中からも熱した声が途切れることなく響いてゆく。振り上げた拳をずっとずっと突き上げていたかった。「オーオーオー」と声を張り上げながら、このひとときを忘れたくない記憶として、互いがここで生きていた証として身体に、喉へと刻みたかった。

 フロア中から飛び交う熱い絶叫。熱狂の風を受け歌ったのが「HARUKAZE」だ。活動初期から愛沢絢夏の背中を強く押し続けてきた歌を、こんなにもたくさん膨れ上がった仲間たちの前で、彼女は一緒に背中を押しあいながら未来へ走っていこうと歌いかける。間奏では、おなじみスクワット姿も登場。観客たちが声を張り上げスクワットしてゆく風景の、なんと奇妙な様だったことか。それだけ、誰もが愛沢絢夏と気持ちを一つにしながら熱狂を貪っていたかった。タオルを、拳を突き上げ、愛沢絢夏と気持ちを一つに溶け合っていたかった。

 「これが今年最後のライブだからさ、全員で、全力で思いきり燃え尽きて帰りたいと思います。みんなのパワーがガシガシ伝わってきて本当に嬉しいです。今日はみんなの期待に応えられるように、みんなの心に思い切り傷跡を刻み込みたいと思います。ここへ至るまで何回も挫けそうになりました。そのたびに夢がわたしに光を示してくれました。何度も助けてもらった歌を、今日は人生最高の曲にして届けたいなと思います」

 「人はいつも間違いを繰り返して たくさんの別れ道に出会う 人生を賭けて答え探すために 僕はここで歌ってるんだ」。何時だってこの歌が愛沢絢夏の心を支えてきたし、心に力を授けてきた。いろんな想いを背負い、歌声にさまざま気持ちを込めながら、この日の愛沢絢夏は力強く「wake up」を歌っていた。その歌声に、言葉に、満員の観客たちが人指し指や拳を高く伸ばし、彼女と同じように想いを噛みしめ、自分の心の糧や支えに変えていた。気持ちを振り絞るように熱唱する愛沢絢夏。その姿へ終始熱いエールをぶつける観客たち。今回、人生を駆けて答えを探すために選んだ一つの決断。歌い続けるために選択した「手術のために休む」という道。その選択や経験も、きっと彼女を大きくしてゆく糧になる。会場中の人たちが愛沢絢夏と一緒に「人はいつも間違いを繰り返して~」と歌い出す。その言葉を受け「僕は光になるんだ」と歌った後に愛沢絢夏が言った「約束するよ」の言葉が、とても嬉しかった。

 「もしかしたら今日でこの声が終わるかもしれないけど、絶対に戻ってくるからな」。その言葉に続いて愛沢絢夏が歌ったのが、「もしも今日終わるとしても」だ。彼女は歌いかけてきた、「もしも今日世界が終わるとしても やり残したことが一つもないように 胸を張って生きていけるように」と。その歌声を、会場中の人たちが大きく手を振り、声を返しながら想いを受け止めていた。この信頼関係があり続ける限り、僕らはまた愛沢絢夏と一緒に笑いあいながら生きていける。たとえ今日のライブを最後にもし何かが終わったとしても、また胸を張って笑って生きていこうじゃないか。その決意の約束を、フロア中の人たちが、沸き上がる絶叫と拳を介して愛沢絢夏と指切りしていた。共に歌声を交わしながら胸の中に膨らんでいった熱い気持ち。魂を震わせ、奮い立たせる歌を愛沢絢夏が届けてくれる限りは、まだまだ僕らは彼女と一緒に生きていける。次の舞台の扉を開いていける。

 「2019年、愛沢はいろんな人たちと出会いました。新しい愛沢絢夏をスタートさせたくてアルバムも作りました。この曲を、2020年の愛沢絢夏に向かって歌いたいと思います」

 未来から向かい風が吹こうとも、しっかりと顔を上げ前を見据えながら突き進む意志を改めて示すように。未来と向き合い光をつかむことを誓うように、愛沢絢夏は「To NEXT」を、自信を胸いっぱいに膨らませながら歌いだした。その歌声に同じように心の背中を押されながら、誰もがこの歌を、笑顔で歌う愛沢絢夏の姿を、拳を振り上げ心に焼き付けていた。ちっこい身体が、この日はとても大きな存在として見えていた。自信を胸に歌いかける姿にエールを送りながら、僕らも自信と勇気を彼女からたくさん受け取っていた。

 「11月12日に喉に出来たポリープの除去手術をします。ここまで1本1本全力でステージに立って歌を届けてきたから、悔いはないです。でも、今の声がなくなることが怖いです。声が変わる可能性もあります。この声がなくなったら、みんな来てくれるのかめちゃくちゃ不安です。でも今日みんなの顔を観ていたら、安心して手術に迎えるなと心から思えました。ありがとう。この声で届ける最後の曲になります。最後は、思い切り噛みしめて歌って帰りましょう。そして2020年も、愛沢と一緒に僕のいる場所を守ってください」

 ここが僕の居るべき場所。ここが愛沢絢夏の生きていくべき場所。それをみずから改めて確かめ、その証をしっかりと打ちつけるよう、最後に愛沢絢夏は、魂を震わせるように「僕のいる場所」を響かせてきた。その声には悲壮感など微塵もなかった。むしろ、何かを期待するような希望に満ち満ちていた。「僕はここにいる この場所はまだまだ小さい」かもしれない。でも、大事なのは大きさじゃなく、誰もが「帰りたくなる場所」であり続けること。僕らは、これから短い旅に出る愛沢絢夏が帰ってくる場所を守りたくて。そして、旅立つ彼女を笑顔で見送りたくて、この場所へ集まった…いや、帰ってきた。この日に共演した沢山の仲間たちと一緒に、不安を背負った愛沢絢夏を、ホームから自信を持った笑顔で送り出したくてこの家に帰ってきた。「やっぱりこの場所が好きだ」と叫んでいた愛沢絢夏。僕らは何時だってここに居る。だから安心して手術に挑戦して欲しい。何かあっても、僕らはここで待っているんだから。愛沢絢夏という家をずっとずっと温め続けているのだから。そしてまた、声を張り上げ、一緒に笑顔で歌おうじゃない。この日のライブでも終わりを知らないように歌いあげた声が、今も心の中に響いている…。

 「いってきます」。最後に愛沢絢夏が力強く言ったその言葉に、来年になったらこの言葉を笑顔で返すよ、「お帰り!!」と。

 

 

 愛沢絢夏は、2020年3月8日に渋谷AUBUで主催するイベントを通し復帰することを発表してくれた。そのときまでにはベストな歌声を持ってステージに立っているだろうからこそ、それまでは、しばし主不在の家を守り続けていようじゃないか。

 

★愛沢絢夏10月25日 ライブダイジェスト

 

PHOTO:yui

(https://twitter.com/tanigawa_yui)

TEXT:長澤智典

 

★愛沢絢夏インフォメーション★

 

2020年3月8日(日) 渋谷 AUBE

愛沢絢夏 復活フェス開催!

Aizawa ayaka Resurrection day「NEO CHAPTER」

 

愛沢絢夏 Web 

http://a-ayaka.com/

愛沢絢夏 twitter 

https://twitter.com/aa_official1