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【ライブレポート】枝分かれした道の先にあった、交わる運命。「ν[NEU]は、希望でなければいけない」

ν[NEU]

 ν[NEU] 13th Anniversary ONEMAN 2022「ファン感謝祭~ヒィロ&タクミbirthday~」が12月3日、渋谷REXにて開催された。

〈12月〉というのは、ν[NEU]とνフリーク(ファン)にとってたくさんの〈きっかけ〉を生んだ、ある意味“運命の月”とも言える。昨年12月11日、縁のあるライブハウスの閉店を受けて再びメンバーがν[NEU]としてステージに立ち、それを機に1年間限定復活の活動がスタートした。思えば2014年に“解散”をしたのも、その5年後に現メンバーでの活動開始から10年というタイミングで1年間のみバンド活動を再開することを発表したのも(※この時発表した事柄はコロナ禍で実施を断念)、そしてここでお伝えするライブにて「また、いつか」と再び幕を閉じたのも、12月だ。

一度、解散の道を選んだバンドが再び時を動かすことは、容易ではない。現にν[NEU]も、メンバーは〈今の生き方〉としてそれぞれの道を歩いているし、華遊(G)のポジションにギタリスト2人が“兄貴”と慕う夢時を迎えてステージに立つことを決断した背景があったことを踏まえると、例外ではなかったはずだ。しかし、かねてより〈希望〉をテーマに活動していた彼らが一度は違う道を歩み、時を重ね、それぞれの人生を充実させた上で〈出会って良かった〉と言える仲間としてステージから伝えてきたそれは、当時とは比べ物にならないほど明確な希望のメッセージだった。それもそのはず。mitsu(Vo)は音楽の道を究め、タクミ(G),ヒィロ(Ba),Яei(Dr)は音楽以外の道で自分のやるべき事を全うし、ステージで再会することが叶わなかった華遊の気持ちもしっかりとそこにはあった。そんなメンバーがν[NEU]という共通認識の元に再び集結し、言わばアベンジャーズたちが見せるようなライブだ、最強以外の何物でもない。

1年間限定復活を締めくくるこの日のライブは、徐々に開いていく幕の向こうに堂々たる板付きの状態でメンバーが登場し、「Lily」から幕を開けた。光に憧れて進んでいく思いは、「The 25th Century Love」で目の前に広がる〈キラリンパ〉の輝かしい景色として具現化され、アグレッシブに「アマオト」へと一気に駆け抜けた。

「今日は2人(タクミ・ヒィロ)の誕生日であり、νフリークへの感謝祭でもあり、活動再開し始めてからの最後のライブとなります。どうかどうか、思い残しが無いように僕らもみんなも楽しんでいきましょう」――mitsu

 この「ファン感謝祭」は7月と10月にも行われ、それぞれメンバーの誕生日のタイミングに合わせて行われていた。その理由は、ライブ毎に〈今回が最後かもしれない〉と感傷的になるのを払拭するために、楽しみを交えたかったからだという。合わせて、誕生日のメンバーがセットリストを決めることが恒例となっており、この日はヒィロが担当。〈まだやっていなかった曲〉と「LUNA」をせつなくも上品に聴かせると、「RED EMOTION~希望~」では照明によって赤く染まるステージで優しくも情熱に満ちた想いを届けた。“笑える明日が来るから”とmitsuとヒィロが微笑み合った瞬間に、ふと思い出したことがある。一度目に活動を再開させようとメンバーが集まった時、初めて合わせたのがこの曲だったというエピソードだ。彼らにとってはメジャー・デビュー曲という大切なターニングポイントを担った曲でもあり、時が経っても各々が自分にとっての“光”を掴むために意志を持って生きている強さを物語る大切な曲なのだろう。

たくさんのハートが掲げられた「恋模様」に続き、〈年を重ねていく中でその時あった事とか思いとか人とか、そういう事をギュッと詰め込んだ作品を作っていたので、今の自分達と重ねながら歌わせてもらいました〉と語ったmitsuの言葉通り、「APOLLON」は今の状況にリンクする部分も感じられた。そして、ヒィロの〈イントロで咲いてください〉という要望に応えた場内の様子も手伝って華やかにベースがイントロを飾った「E.Y.E」がムーディーな空気を醸し出すと、「YES≒NO」では〇・×をサインしながらジャンプするアップテンポにシフト。そのテンションは、自らケーキを持って登場したヒィロとタクミのバースデーを祝う朗らかな一幕へと続いた。

ラストスパートは、ν[NEU]の“王道”と言うべき怒涛の展開が待っていた。まずは、ヒィロが強く希望していたという「New World」。バンドを通して抱く不屈な抒情詩は、ν[NEU]というバンドの根源を表すテーマソングのようでもある。それを戦友とも言えるメンバーとファンと分かち合える“今”という日が来るなんて、誰が想像出来ただろう……。さらに、「妄想する?」で可愛らしく沸かせた「妄想接吻」に続いた「ピンクマーブル」では、言わずもがなフルボルテージへ。このシーンにおいて、キレキレのエンターテイナーとしての金字塔を築いたと言っても過言ではないmitsuが先導する唯一無二のテクノテイストのパワフルさが、「エンドロール」で“必ずまた逢えるから 今は笑って”と笑顔でメッセージするのに相応しい空気を生み出していた。そして、たくさんの〈ありがとう〉が詰まった、ミラーボールとキラリンパのまばゆい光の中で届けられた「スプラッシュ!」。メンバーの目には輝くものが覗け、mitsuはこみ上げる思いさえも声に乗せて今の彼だからこそある包容力という強さを持って歌い切った。

「ν[NEU]は、希望でなければいけない」――mitsu

ラストを飾った「ひとりじゃない」の演奏前に核心を突いた言葉を添えて、前を向いてこの先を歩んでいく皆が心強い呪文のように〈ひとりじゃない〉という言葉を噛みしめることが出来たエンディング。枝分かれした1人1人の人生を充実させていたからこそ、今回のようにその道が交わる可能性が生まれた。また“いつか”そこで起こる奇跡的なドラマを楽しみに、この瞬間からまたそれぞれの道を生きていこう。メンバーがそうであるように、私たちも。

Photo:Aki(Lc5)
Text:平井綾子

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ν[NEU] 13th Anniversary ONEMAN 2022
「ファン感謝祭~ヒィロ&タクミbirthday~」
2022年12月3日(土) 渋谷REX

<セットリスト>
1.Lily
2.The 25th Century Love
3.アマオト
4.LUNA
5.RED EMOTION~希望~
6.恋模様
7.APOLLON
8.E.Y.E
9.YES≒NO
10.New World
11.妄想接吻
12.ピンクマーブル
13.エンドロール
14.スプラッシュ!
15.ひとりじゃない