Pretty one PRESENTS 混沌少女単独公演「混沌少女」 2023年12月10日（日）　目黒鹿鳴館【ライブレポート】混沌少女、単独公演にて目標動員69人を見事達成！「ここに、居場所を作って帰ってください」

2023.12.13

　混沌少女が、12月10日に目黒鹿鳴館を舞台に単独公演を行った。これまでも単独公演の度に目標動員を定めてきたが、今回はSHOWROOM配信中にメンバー自ら“目標動員69人”を定め、その達成のためにビラ配りを行ったり各々がSNS上で“毎日企画”を行ったりと、当日までの日々を盛り上げる活動を通して混沌少女の名を広める活動をしながら、いつも以上に気合いを入れて挑んだ単独公演だった。まさに0（ゼロ）から“V-ROCK＆PUNKアイドル”を掲げて活動を続けてきた彼女たちは、この日70人を動員するという結果を生み出し、「混沌少女」という公演タイトルに見劣りしないほどこれまで構築してきたものを堂々と見せつけるライブを繰り広げた。

SEと歓声に乗せて颯爽と登場したメンバーは、“可愛い”を象徴する某テーマパークのキャラクターを彷彿とさせる衣装を纏い、観客を巻き込みながら拳をあげていた。魑魅魍魎が「12月10日目黒鹿鳴館、お集まりいただきありがとうございます。今日は全力で楽しんで行きましょう！」と叫ぶと、心に傷を持つ女子達が立ち上がるためのアンセムでもある「嘘吐嫌ヰ-ウソハキライ-」からスタート。立て続けに繰り出されるロックサウンドに乗せ、「鬱々鬱」では世の中の理不尽さへ、「這い上がる世界」では助けを求めるように、半ば叫びにも似た歌声を響かせる。ネガティブさと対峙し、もがきながら生きている彼女たちのリアルを映しだすようなパフォーマンスは“可愛い”衣装が与える印象とは正反対。それはまるで皮肉を込めた混沌少女の強さを表しているようで、非常に刺さる。

　“学校”にまつわるコンセプチュアルな部分も独自なところだが、ここでチャイムに乗せて1人ずつ名前を言ったのち、「私たち、ここ目黒で自殺します」と誘った不朽不滅が途中体育座りでメインボーカルを取る「非自殺少女」や、手拍子に湧いた「あなたのあのこ」。そして、天下統一が繊細にタイトルコールをして繋げた「軌跡を投じる。」では、これまで必死に活動してきた彼女たちが未来を歌う。センターで手を重ね合った3人のひたむきな気持ちもまた、嘘偽りのない本音なのだろうと感じられた。

　ここで一度ステージを後にしたメンバーが改めて姿を現すと、先ほどとは一変して腕章の付いた黒のライダースを基調としたハードな装いで登場。さらに、新曲「ニンゲン・サークル」を披露するという攻めっぷりと同時に、ここから“本領発揮”をしていく序章ともなった。「ぶっ壊せ」では、整列して前へ倣えをする振り付けが“決められたルール”を象徴的に表し、ルールを壊せという曲に込めたメッセージが観客に火をつけると、今やキラーチューンともいえる「ステゴマリスト」では、ステージとフロアの境目がわからないほどに体当たりの空間を生み出しヒートアップ。さらに、マイクレスでメンバーが1人ずつ叫んだ後に続いて観客も存分に声を出し、「世の中に物申す」と告げて披露した「ゲコクジョ」では、肩を組みながら一体感をもって我が道をゆくアウトローな思いを吐き出し、パンク・ロック全開の「フカイイミハゴザイマセン」は体感秒速で駆け抜けた。ラストスパートに用意した「MAD MAD GiRL」は、まさしくカオス。ステージをいっぱい駆け回りながら、マイクを通して届く3人の歌を逸脱した衝動的な声がまた、ロックスピリッツを感じさせるには十分だった。

そして、惜しみなく会場を掻き乱した「カリスマ」が、ラストを飾った。この時、フロアに舞っていた扇子は、入場時に配布されていたもの。ここには、あらかじめメンバーが思い思いにイラストや文字を書き入れていたようだ。どれ1つとして同じものがない扇子の中に書かれていた、“存在証明”という言葉が目に飛び込んできたが、この曲の最中に天下統一は「今日ここに、居場所を作って帰ってください」と叫んでいた。なぜ彼女たちは歌うのか？　なぜ“混沌少女”であり続けようと日々努力を重ねてステージへ立つのか？　その意義は1人ひとりにあって然るべきものであるが、今ではそれぞれの意義を果たすだけではなく、混沌少女を求めて集う人々が感情を開放する場所を生み出すほどに大きな意味を成すものになっている。それを証明していたのが、目の前に広がる狂騒の情景だったのだ。

　元気はつらつ天下統一、負けず嫌い魑魅魍魎、不思議世界不朽不滅――「MAD MAD GiRL」の中に、それぞれのメンバーを表すセクションがある。円陣を組むようにして、この日も全力で、全員で頭を振りながら歌っていた。不器用でも、実に人間味に満ちた個性豊かな3人の一心不乱な生きざまは、これからも混沌少女に触れた人々の心を燃やしていくはずだ。