SHAZNAの30周年公演は、30年間の歩みを彩る名曲ばかりが並んだ神セトリ公演。
昨年、結成30周年を迎えたSHAZNA。30年という歩みの中で彼らは、活動休止や解散も経験。2017年に再結成して以降は、ゆっくりとした歩みながら活動を継続。栄華を極めた時期もあれば、奈落へと落ちて這いつくばった時期もある。たとえ絶望にうちひしがれようとステージに立ち続けてきたのは、いろんな形を模索しようとも、歩みを続ける3人を信じてきたLOVERS(ファン)の存在があったからだ。
再結成後のSHAZNAは、もう「解散」という言葉を口にすることはない。命尽きるまで歩み続ける意志を胸に記している。だからこそ30周年という大きな区切りの年に、LOVERSたちへ感謝の思いも伝えつつ、これからも共に歩み続ける意志を確かめあおうと、「30th AnniversaryWith your precious LOVERS~同窓会からはじめよう~」と題した単独公演を4月21日(日)に日本橋三井ホールで行った。タイトルへ記した"同窓会"の文字が示すように、メンバーやファン同士の再会も含めた懐かしさ故の思いも加わり、チケットはSold Outを記録した。
この日のライブを行う前に、SHAZNAは「ライブで聴きたい楽曲」を、Webを通してファンたちから募っていた。今回の演目は、最新曲の『一角獣 -モノケロス-』以外は、ファンたちのリクエスト上位曲たちで構成。そこには、インディーズ時代の楽曲が多くランクインしていた。今回の投票を実施したときに支持していた人たちが、インディーズ時代のSHAZNAに触れていた人たちが中心だったのも嬉しい驚きだった。そう、みんなこの日を待っていた。
ライブは、メジャー1stアルバムに収録していた『Magenta story』から幕を開けた。始まりに相応しい攻撃的な楽曲だ。でも客席中から拳が突き上がるのではなく、揺らめく手の花の咲き誇る景色なのがSHAZNAらしさであり、90年代を彩ったヴィジュアル系バンドのライブらしい風景だ。
足を運んだLOVERSたちにとっても嬉しかったのが、次に『ESCAPE』を演奏したこと。小箱で対バンライブを重ねていた時代、SHAZNAは『ESCAPE』を響かせることでフロアにいた人たちの心をつかみ、LOVERSとして迎え入れてきた。IZAMが「愛しい声が今その胸に届いていますか?」と歌いかけるたびに、振り上げたたくさんの手が舞台へと伸び、その声や言葉をつかもうとしていた。 出会った時期は様々なれ、SHAZNAが届けた愛しい声を胸の奥で響かせ続けている人たちが、今でもたくさんいることが嬉しい。立て続けにSHAZNAは、最新曲の『一角獣 -モノケロス-』を演奏。『ESCAPE』とは、生まれた年代に20年以上に開きがあるとはいえ、楽曲が放つ熱や、歌詞に込めた意志は、何もぶれてはいない。そこが、時代の変化の波に左右されない独自性を培ってきたSHAZNAらしい姿だ。
彼らの楽曲にラブソングは欠かせない。次のブロックからはSHAZNAらしさを描きだしたラブソングの数々を披露。インディーズ時代から歌い続けてきた『If... -with tears in one's eyes-』には、あの時代特有の悲嘆にくれる心模様が描き出されていたが、続く、メジャーデビュー以降に発表した『Cest la vie』や『Iily of the valley』には、恋に恋するときめいた気持ちが映し出されている。ライブでも、IZAMIの恋にときめく思いの見える歌声や、華やかで軽やかなA・O・IとNIYの演奏に触れ、大勢の人たちが両手を優しく揺らし、心に小さな花を咲かせ、一人一人が恋する乙女や少年に心を戻しながら、恋したときのときめきを胸に甦らせていた。淡い恋心が高まったところで歌ったのが、『恋人』だ。曲が流れた瞬間から、舞台と客席の間にある境界線を互いに飛び越え、お互いを強く求めあっていた。切ない歌詞とはいえ、『恋人』に触れている間中、初な恋にときめいた頃の自分を思い返しつつ、胸を弾ませるキュンメロなこの曲の持つ魔法に魅了され、気持ちがずっと煌めいていた。歌い終え、最後にIZAMの投げたKISSが、今も胸の奥に痣のように残っている。
次のブロックでは、インディーズとメジャー時代の楽曲を交互に演奏。『Dizziness』を通して見せた攻めた表情とノスタルジックな心模様。『華やかな演奏に乗せた『Love is Alive』では、「世界で一番大好きな君」と愛しい人との甘い物語を歌うIZAMの声に触れ、場内中の人たちがロマンチックな気分に浸っていた。愛しい人への恋心を歌った『VOICE』では、2ビートで駆ける演奏や、途中三拍子に変化する曲展開に気持ち奮い立つドラマを覚えつつ、「この詩声は届いていますか?」の声に胸をキュッと締めつけられた人たちが、舞台に向け大きく手を伸ばしていた。続く『Sweet heart Memory』では、運命の人を待つ恋心を歌ったIZAMの声に向け、たくさんの人たちがラブなハートのチューニングを合わせ、その思いを抱きしめながら淡い笑顔を浮かべていた。
温かな思いへ包まれた中へ繰り出したのが、一風堂のカバー曲『すみれ September Love』。心地好く跳ねた楽曲を魅力に、3人は、満員のLOVERSたちと共に、この場を華やかなダンスホールへ染め上げ、気持ちが揺らめくままに、心も身体もゆらゆらと揺らしていた。IZAMと一緒に「You・You・You」と歌声を交わしあった、あのひととき、本当に心が踊っていた。
最後のブロックは、ラバーズナンバーを3連打。幻想ファンタジックな音色に乗せ飛び出した『PIECE OF LOVE』では、IZAMがスタンドマイクに設置したマイクを強く握りしめ、愛しい思いを相手(LOVERS)へ届くようにと凛々しい様で歌えば、『Dear Love』でも逢いたくて募る思いを膨らませるたびに、歌声や演奏に熱を漲らせていた。
本編最後に歌ったのが、SHAZNAの顔となる『Melty Love』。IZAMの歌声に合わせて、LOVERSたちが手にしたサイリウムを振りながら、この会場をピンクの光揺れる景色に染め上げた。凛々しい姿で演奏を届けるA・O・IとNIY。対してIZAMは、とろけそうな甘い歌声を響かせ続ける。IZAMに誘われるままに起きた「Melty Love×3」の大合唱。『Melty Love』に触れている間中、みんなが恋に恋する乙女や少年に心を戻し、SHAZNAに思いきり恋していた。
一つ一つの楽曲が、出会ったあの頃の自分へ心を揺り戻す。30年という時間軸を飛び越えながら、いろんな思い出の景色へ、新たな思い出を描き加えた時間が、一瞬で過ぎていった。
アンコールの声変わりに、『Melty Love』のサビをメンバーが出てくるまでエンドレスで歌い続けるのも、懐かしく、でも、お馴染みの風景だ。アンコールの1曲目を、インディーズ時代の名曲『Raspberry Time』で始めたのも嬉しかった。活動当初こそ、切ない恋心を歌うことの多かったSHAZNAだが、この頃には、後のメジャー時期にも繋がる、幸せを求める愛しい恋心を歌うようになっていた。そんな表現の変化も感じつつ、跳ねるビートに合わせ、大勢の人たちが恋に胸をときめかすように手を大きく振りながら、メンバーらと甘い熱気を味わっていた。
そこへ熱い衝動をぶつけるように、SHAZNAは『PEARL』を演奏。この曲も、インディーズ時代からライブ空間に熱狂渦巻く景色を作り続けてきた楽曲だ。IZAMの歌う「Pearl White Memories」の歌声に合わせ、LOVERSたちも声を張り上げる。この場に生まれた一体化した空気は、まさに、昔のライブハウスの中に渦巻いていた熱気と同じだ。
「お前らの曲だ」と叫ぶIZAM。最後の最後にSHAZNAが届けたのは,やはりこの曲。この場に足を運んだ一人一人のテーマ曲の『LOVERS』だ。活動初期の曲らしく、だいぶ闇を抱えた歌詞であるところにも時代性を覚える。この曲では、A・O・IとNIYがそれぞれ叫んだ「Lovers see just see another moonlight」の声と、満員の観客たちが熱情した声を戦わす場面も誕生。この曲の途中で、演奏を中断し、2日後に誕生日を迎えるIZAMのためにケーキでお祝いをするサプライズも登場。その後も、気迫と気迫をぶつけあう熱いバトルを繰り広げながら、互いに熱情した姿で、30周年のお祝いの幕を閉じていった。
今後のSHAZNAだが、メジャーデビュー日に当たる8月27日にアルバム『参華三釼』を発売する。その作品を手に、9月8日にサンリオピューロランドフェアリーランドシアターで、2部構成のライブを行うことも発表した。この日のライブは、第1部でアルバム曲+シングル曲を中心にセレクト。第2部では、アルバム曲+レア曲を中心に集めたライブを行う。2回の公演ともに見逃せない内容だ。止めることなく、歩み続けるSHAZNA。その道のりへ、これからも一緒に寄り添いながら歩き続けようじゃないか。
最後に。この日のライブを観て改めて感じた思いを述べたい。活動初期時こそ、当時のヴィジュアル系(以下・V系)バンドと同じような時代背景に寄り添う、刹那(一瞬の美学)を抱いた切ない歌詞を綴ることもあったSHAZNAだが、彼らは一貫して"愛"を歌い続けてきた。昔も今もSHAZNAは、V体バンドが好む破滅の美学ではなく、幸せを求める恋心を歌にしてきた。インディーズ時代のSHAZNAは、音楽シーンの中でガラパゴス化していた刹那と破滅を好む当時のV系シーンの中でも異端な存在だった。その異端が、テレビ番組を通してV系の顔となり、結果、ヴィジュアル系という言葉を世に知らしめた。異端が王道になる歩みは、V系というシーン自体も経験してきたこと。世間的に異端だったV系シーンの中でもとくに異端の存在だったSHAZNAが、結果的にV系の王道に祭り上げられたのは、最高の皮肉だった。でも、裏を返せば、あの頃からSHAZNAは、愛を歌う最高のポップメイカーだった。だからジャンルの壁を超え、大勢の人たちの心をときめかせた。もちろん今も、どの時代の楽曲を聴いても、色褪せないどころか、胸をドキドキさせる。当時のV系シーンが爪弾きにしたバンドこそが、最も大衆のハートをつかむヒットメイカーだったところが、じつに愉快じゃないか。結果、それが影の存在だったV系を日向の世界へ押し上げていったのだから。
今もSHAZNAは、世の中の人たちの心を動かす良質な恋歌を変わらずに届け続けている。30年という時を経て、ふたたびそこへ熱い視線が注がれていることが嬉しい。時代で遊ぶ人々よ、その視線を、もっとこっちへ向けてみないか。
PHOTO:千葉貴文
TEXT:長澤智典
Information
9月8日(日) 開催決定!
SHAZNA 結成30周年 アルバム発売記念ライヴ 『参華三釼』〈サンカミツルギ〉
会場💜サンリオピューロランド・フェアリーランドシアター
【1部 ~A feast of popular songs~】
開場13:00/開演13:30
全席指定
※アルバム曲とポップ曲中心のセットリストになります。
【2部 ~A feast of maniac songs~】
開場17:00/開演17:30
全席指定
※アルバム曲とレア曲のセットリストになります。
▼詳細はこちら
https://www.puroland.jp/collaboration/shazna-puro
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