REPORT

DEZERT、SORAバースデイのツアーファイナル三郷市文化会館大ホールライヴレポ!

DEZERT

今年2月から全国28か所を巡ったツアーのファイナルを飾る埼玉県三郷市は、SORAの生まれ故郷。

DEZERTは2018年にも同会場の小ホールで凱旋ライヴを開催しているが、今回は念願の大ホールを見事ソールドアウトさせた。

半年後に初の日本武道館公演を控えているという状況も含め、トピックスがいくつも重なった今回のライヴは、DEZERTにとっても観客にとっても、まさに特別な公演。メジャーデビューアルバム『The Heart Tree』を携えて回ったツアーで、<この場所があなたの居場所になりますように>という純粋な祈りを伝え続けて来た彼らが最後に届けたのは、やはり最大級の愛だった。

会場の周りは公園や住宅がある長閑な雰囲気だが、敷地内へ一歩入るとSORAを祝う豪華なフラワースタンドが並び、ステージには階段付きの大がかりなセットが設置され、まさに晴れ舞台といった印象。

定刻を少し過ぎたころ、荘厳なSEをバックにメンバーが登場。背後から眩い光に照らされながら、SORAがドラムセットに立つと、絶叫にも似た男女の歓声があちこちから飛び交う。すでに気合いは十分のようだ。

ライヴの幕開けは、アルバムの1曲目でもある「Hopeless」。ダークかつヘヴィなサウンドで一気に観客の心へ火をつける。

「君の脊髄が踊る頃に」へ突入すると、ヘッドバンギングの嵐が巻き起こり、メンバーも観客も序盤からフルスロットルで飛ばしていく。

「延命ピエロ」「匿名の神様」と、ライヴ映えするハードなナンバーを続けて投下。

Miyako(Gt)、Sacchan(Ba)は階段を駆け上り、電飾で彩られたセットの上で演奏。

躍動感溢れるパフォーマンスと少年のような表情からは、大きなステージを存分に楽しんでいる様子が伺えた。

 

「楽園」では、千秋(Vo/Gt)によるアコースティックギターのあたたかい音色も加わり、曲の持つ美しさと儚さをより強く表現。

ホールに相応しい壮大なサウンドは、大きな感動となって観客の胸に広がっていった。

続く「オレンジの詩」は、2018年にリリースしたアルバム『TODAY』の収録曲。

ストレートなロックサウンドと味わい深いメロディが作り上げる高揚感に、観客は夢中で拳を突き上げる。

直近のインタビューで、千秋は本楽曲について「バンドとお客さんの間で“激しい曲”の認識に相違があり、当時のライヴでお客さんを困惑させてしまった」「それがDEZERTのコンプレックスだと感じて、従来とは違う曲を作り始めた」と話していたが、

このタイミングでセットリストに組み込んだことは、6年かけて積み重ねてきた自分たちの音楽とオーディエンスへの信頼の証だったのかもしれない。

 

曲終わりの盛大な拍手は、SORAが刻むリズムに合わせて自然と手拍子に変わっていき、一人ひとりの観客が生み出す音が一つの大きな音となってホール内へ響き渡る。

「今鳴ってるその音が、僕は世界一大好きです。この席にいるあなたたちは、僕らにとって間違いなく大切な人たち。

この音をどうやってもっと大きくするか、もっと特別なものにするか、これ以上ないくらい考えて活動してます。

期待してて、俺たちの未来に」。そう力強く宣言した千秋の言葉を讃えるように、手拍子の音はひときわ大きく鳴り響く。

ステージと客席の間で確かな思いが重なったところで、本公演のタイトルにも掲げられている「僕等の夜について」を届ける。

白い光が会場全体を明るく照らし出し、切実に訴えかけるメンバーと、その気持ちを真摯に受け止める観客という、美しい光景が鮮明に映し出されていた。

ライヴ中盤では、活動初期に会場配布された「変」で狂気に満ちた空間を作り上げると、張り詰めた空気の中、「「誰にも渡しちゃいけない場所を心と名づけ」」へ。

 

生きる理由や意味を探し続けるDEZERTの核とも呼べるテーマをダークなサウンドに乗せて開放する曲。

SORAは体重の全てを乗せたような重たい打音を繰り返し、Sacchanは身体の芯から揺さぶるような低音を奏で、Miyakoはアグレッシブで凶暴なフレーズを繰り出す。

3人が放つ轟音の中心で、千秋は感情をむき出しにするかのように叫び、歌う。4人の放つ気迫と重圧に圧倒される。

「でかい会場に立てば、愛されれば、大嫌いなこの世界も変わる、漠然とした不安を取り除けるって、バンドを始めたころは思ってた。

でも未だにステージに上がってくるとき、すげぇ不安だよ。正直、2年前の日比谷からこの曲が大嫌いだ。

“這い上がれ”なんて言われたって、できねぇよ。俺は自分の曲で救われたことないし。ただ、俺らを俺ら以上に評価してくれる人がいるから。

お前らだよ。だから今日は弱いまま、この場所で弱い一歩を踏み出したい」。

繊細な感情を赤裸々に吐露してから、歌い始めたのは2022年の日比谷野外大音楽堂公演で初披露した「The Walker」。

理想と現実の狭間で葛藤する姿も見せ、すべてを曝け出して歌う千秋。

「俺らの一歩に付き合え!」と叫び、大嫌いだと宣言した、自身を鼓舞するような言葉たちを丁寧に歌い上げる。

高く掲げられた無数の手や真っすぐに見つめる視線の一つ一つが、きっと彼らの心を強く支えていたはずだ。

ラストスパートへ向け、「「遺書。」」「「君の子宮を触る」」でアグレッシブに暴れ狂う観客とメンバー。

千秋は曲中に2階席で歌ったり、客席の間を走り抜けたりと、まるでライヴハウスのように自由奔放なスタイルで会場を使いながら、至近距離で観客とコミュニケーションをとっていく。

冷めない熱気の中、千秋は「あー楽しかった。毎日今日ならいいのに」と呟きつつ、ツアーを経て感じた思いを言葉にしていく。

「俺、自分が特別なんだってこのツアーで思いました。もし明日事故にあったとしても、特別な人生だったって思える。

 

君たちも人生が終わるとき、“DEZERTと出会ってよかった”って思ってほしい。DEZERTが今ここで終わったらきっと忘れる。

いくら好きでも目の前にいる人が大切やん。だからできる限りお前らの目の前にずっといようと思う。そのために武道館もやる。

埼玉には、大宮ソニックシティもさいたまスーパーアリーナもある。そこで同じことを言ったら思いも変わるやろ。

そのために俺は売れようと思ってる。俺たちはお前たちのことだけを考えて音楽を作る。もし人を殺す歌があったとしても、お前たちのことを思って歌ってる。

“DEZERTが好きな自分は特別なんだ、最高なんだ”って思える活動をするから、信じてて」。これまで“自分は天才ではなく凡人だ“と言い続けてきた千秋が、自身を特別な存在だと認識したことは、DEZERTのこの先に繋がる大きな一歩と言えるだろう。

そしてその背中を押したのは、紛れもなく観客一人ひとりの力である。本ツアーの前半戦、3月2日に行われた東京・O-EAST公演のMCで、千秋は「お前らとは友達にはなれないけど、それ以上の関係になれると思う」と話していたが、互いを“特別な存在”として求めあう関係性がその一つなのかもしれない。

本編ラストは、「TODAY」。<生きててよかった そう思える夜はきっとここにある>と力強く歌いながら、大きな円を腕で描き、客席を指し示す千秋。

3人もその思いに共鳴するように、魂のこもった音を届ける。

最後に千秋が「いつでも居場所作って待ってるんで、いつでも弱いままもがいてるんで、一緒に悩みましょう!」と叫び、4人はステージを後にした。

アンコールでは、ステージセットの階段を使って某音楽番組の登場シーンを再現してみたりと、演奏中とは打って変わってラフな雰囲気に。

さらに、誕生日を迎えたSORAが今の心境を語り始める。

「15歳くらいの時に兄貴の友達の家でhideさんのポスターを見て、ロックがやりたいと思ってバンドを始めました。

なにも続かなかった俺が唯一続いたのがドラムで、地元の仲間は『本気でバンドをやりたい』って言う俺を応援してくれました。

今日でhideさんと同い年になってしまいました。今までは全身ピンクにしてあの人みたいになりたいと思ってたけど、自分らしく伝えたいと思ってやめました。

ドラマーになってすごく幸せです。めんどくせぇメンバーだけど、後ろから見るとやっぱりかっこいい。このバンドを続けるのが僕の夢です」。

 

 

最後は涙ぐみながら「親父ありがとう!」と家族への感謝を伝えるSORA。その熱い気持ちを込めて歌ったのは、hide with Spread Beaverの「ROCKET DIVE」。

家族や仲間、メンバーに見守られながら、目標だった地元の大きなステージで、憧れのロックスターの曲で観客を沸かす。少年時代からの夢が一つ叶った感動的な瞬間であった。

そしてこの日の最後に届けたのは、今のDEZERTの核となる曲「The Heart Tree」。これまで多くの言葉で伝えてきた思いを集約して込めた魂の音楽が、観客の心を震わせる。

千秋は、「ここが絶対お前らの居場所やからな、俺が保証する。色々頑張ってることあると思うんで、大丈夫やでってこの場所では俺が言ってやる。

DEZERTのライヴ来てるお前らは絶対大丈夫」と、ライヴが終わった後も観客の心に残る、まるでお守りのような優しい言葉を最後に贈った。

樹木は、人生や生命の象徴ともされる。長い年月をかけて、土に根を張り、枝を伸ばし、花や実をつけ、枯葉を落として新たな命を繋いでいく。

本公演は、そんな半永久的であたたかい樹木のように、決して刹那的な非日常を楽しむだけの時間ではなく、この先の日常を生きる希望や勇気へと確かに繋がる夜だった。

メジャーデビューツアーという記念すべき公演はこの日で終わりを迎えたが、彼らが与えてくれた言葉や音楽は、この先の未来へと続く特別な記憶として刻み込まれたに違いない。

カメラマン:西槇太一

ライター:南明歩


DEZERT LIVE TOUR 2024 “The Heart Tree” 【TOUR FINAL】 -僕等の夜について編- 

2024年6月22日(土)三郷市文化会館 大ホール

<SETLIST>

1 Hopeless

2 君の脊髄が踊る頃に

3 延命ピエロ

4 匿名の神様

5 御法度

6 楽園

7 オレンジの詩

8 僕等の夜について

9 羊は死刑台で笑えるか?

10 ミスターショットガンガール

11 変

12 「誰にも渡しちゃいけない場所を心と名づけ」

13 Call of Rescue

14 The Walker

15 「遺書。」

16 「君の子宮を触る」

17 TODAY

EN1 飼育部屋

EN2 脳みそくん。

EN3 ROCKET DIVE

EN4 再教育

EN5 The Heart Tree


≪ライヴ情報≫

■Let's Go Budokan?! -みんなで武道館へダイナマイ!!-

2024年9月23日(月・祝)品川インターシティホール

第1部:心臓編       OPEN 13:00 / START 14:00

第2部:脳味噌編    OPEN 17:00 / START 18:00

<チケット等詳細> https://www.dezert.jp/news/detail/28554

■DEZERT Presents 【This Is The "FACT"】 TOUR 2024

2024年10月5日(土) 名古屋DIAMOND HALL vs lynch.  OPEN 16:15 / START 17:00

2024年10月20日(日) 大阪BIGCAT vs Sadie  OPEN 16:15 / START 17:00

2024年11月15日(金) Zepp Shinjuku vs MUCC  OPEN 17:00 / START 18:00

<チケット等詳細> https://www.dezert.jp/news/detail/28549

■DEZERT ONEMAN LIVE日本武道館

2024年12月27日(金)

※詳細後日発表


【リリース情報】

■2024年9月25日(水)発売

傑作音源集「絶対的オカルト週刊誌」

・初回限定盤:2CD+Blu-ray(3枚組) CRCP-40686/87  11,000円(税込) ※トレカ5枚封入

・通常盤:2CD(2枚組) CRCP-40688/89  4,400円(税込) ※トレカ1枚封入

<リリース詳細> https://www.dezert.jp/news/detail/28561


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