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【ライブレポート】Sadie、主催ライブ『THE UNITED KILLERS』を開催。lynch. 、キズを迎えて見せた、時代をかける強者たちとの共演。「最高のライバルと、最高の仲間と一緒にできて本当に光栄です」『2024年9月21日(土)JAPAN PAVILION HALL A』

Sadie

Sadieが、主催ライブ『THE UNITED KILLERS』を9月21日、JAPAN PAVILION HALL Aにて開催した。本公演は3月17日に豊洲PITにて行われたSadieの復活公演で発表されたもので、lynch.,キズという最強メンツを迎えての開催ということもあり、発表時は場内に割れんばかりの歓声が起こったことが記憶に残っている。無論、チケットはSOLD OUTだったわけだが、なんとJAPAN PAVILION HALL Aにおける最大動員数を記録したという報告もあり、記憶と歴史にも残るライブとなった。

先述した復活公演を行った時点で決定していた“次”のライブは、4月に行われた彼らの地元、大阪・なんばHatch公演のみであったことから、この主催ライブ決定の知らせはSadieの“これから”を確約するものでもあった。ファンが歓喜の声をあげたのには、こうした一因もあってのことだったと想像する。復活後初の対バンライブとなったこの日のSadieは完膚なきまでに自分たちらしさを貫き、それによってSadieというバンドの存在感を再認識させられる結果ともなった。それもそのはず、“9月21日”という日は9年前にSadieが活動休止をした日であり、それは終わりではなく始まりを意味するものだったとはいえ、かつての“悲しみ”を払拭せんとする意気込みが表れてこそだとするならば、熱が入っていたのも頷ける。

1人ひとりステージへ登場し、幕開けを飾ったのは「Ice Romancer」。剣(Gt)と美月(Gt)によるギターのユニゾンというSadieのシンボル的サウンドがシグナルとなって、オーディエンスの覇気は一瞬にして昂っていく。「声をくれ!」という真緒(Vo)の一言に、生きてる証といわんばかりにボリュームを増す歓声と、それぞれのポジションで個性をむき出しにプレイする5人。まさしく、この空間こそがSadieだと言わんばかりの威力を感じさせたところへ間髪入れずにメンバーがセンターに集結して轟音を響かせると、真緒が「所沢!今日は関係なく暴れてくれるな!? キズ、lynch.、Sadie、1つになってかかってこい!」と叫びあげて「心眼」へ。冒頭2曲の並びは9年前を彷彿とさせるものがありつつも、アグレッシヴに加速の一途をたどるこの瞬間にはマイナスな要素など一切感じられない。

「今年、復活させていただきまして……(観客拍手)ありがとうございます。復活して一発目のイベント、ゲストにキズとlynch.、最高のライバルと最高の仲間と一緒にできて本当に光栄です。時代の移り変わりはありましたけど、この3バンドで一緒にできるのを本当に楽しみにしていました。今日は、すべてを出しきって帰ってくれ!」――真緒

内面から抉り出すような重厚感に委ねて感情を開放することを止めずとも、そこはかとなく荘厳な空気感を纏っていた「Rosario- ロザリオ -」や「Payment of vomiter」。そして、圧巻のアカペラからスタートした「棘 -toge-」では、景(Dr)と亜季(Ba)がコンタクトしながらリズムを刻み、真緒がギター陣へ歩みよりながら歌うといったシーンには、楽曲の激情に相まってバンドのグルーヴが目に見える形で表れていた。

クライマックスにさしかかり、会場の一体感を高めるファクターとなったのが「クライモア」の躍動感。そして、「生きてるか!?」と幾度となく叫びながら問いかけていた「Grieving the dead soul」から、ドラム前に集結してから一思いに突入した「妄想被虐性癖」ではヘッドバンギングの嵐を起こし、ギターを置いてマイクで叫ぶ美月や、真緒の「一つになってかかってこい!」という扇動によって何度も何度も熱量を体当たりでぶつけていく。その様子を目にしながら痛感したのは、この場における“煽る”というのはただオーディエンスの熱を乞うだけではなく、まさしく人間の心を煽り、焚きつける力を持った者が起こす熱量はすさまじいということ。そんな、果てしなく痛く、どこまでも強い音楽で粉砕していった極めつけに放たれたのは、晴れやかでメロディアスな「陽炎」。Sadieの楽曲の中でも“陽”の力を内包したこの曲に乗せ、シンプルに拳を振り上げながら歌い合う情景に溢れていたものは、紛れもない生命力だった。

「俺たちがSadieだ!」と強く印象付けるように真緒が叫んで締めくくったのち、アンコールの声に応えて再び登場すると、ラストはSadieの代表曲であると同時に、かつて“セッションの定番”とも言わしめた「迷彩」を葉月(lynch.)と来夢(キズ)を迎えてプレイ。さらに、終盤には悠介(lynch.)も登場し、和気藹々とした雰囲気も生まれる中で〈THE UNITED KILLERS〉と呼ぶに相応しい強者たちと共にライブはエンディングを飾った。

「改めまして、『THE UNITEDKILLERS』ありがとうございました。めちゃくちゃ楽しかったです。この3つの組み合わせが生んだ幸せな時間をメンバーみんなで噛みしめました。また、どこかで会いましょう」――真緒

“また”と言える未来がある幸せを具現化するように、終演後に映像を通して20th Anniversary Tour『悲壮』が発表された。これは、DAY 1を-mode of sadness-、DAY 2を-mode of darkness-として各地2daysで構成されるツアーになるとのこと。そして、ツアーファイナルは『脈拍』と題し、2025年3月16日に日比谷野外音楽堂にて開催される。10周年のときには一度歩みを止めることを選んだが、目の前に迫ってきた20周年という次なる大きな節目に向かって止まらない姿勢を提示。Sadieの目指す“NEXT PHASE”への挑戦から、一瞬たりとも目を離すべきではない。

Report◎Ayako Hirai

Photo◎Jun Tsuneda


[Sadie セットリスト]

1.Ice Romancer

2. 心眼

3.Rosario- ロザリオ -

4.Payment of vomiter

5. 棘 -toge-

6. クライモア

7.Grieving the dead soul

8. 妄想被虐性癖

9. 陽炎

EN. 迷彩 (セッション)