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「今日しか観られないD≒SIREを楽しんでくれ」。療養中の秀朗への想いも抱えて伝えた、D≒SIREの現在地。

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 その報せが届いたのが、本番を二週間余り後に控えた9月10日のことだった。以前から患っていた病気が悪化したことで、担当医師より『音楽活動の即時停止、療養の必要がある』との指示を受け、ベースの秀朗が長期療養に入った。2027年5月3日に新宿ReNYで行う公演までに復帰するのかは今後の経過を見てのことになる。とはいえ、秀朗は必ず帰ってくるはずだ。それがいつになろうとも再会の日までしばし待っていてもらいたい。

  2027年5月3日に新宿ReNYで行う単独公演に向けて、バンドをブラッシュアップするためにと8月より3カ月連続で行っている単独公演も、9月22日(火)にGT LIVE TOKYOで行った公演で2本目を迎えた。この日のD≒SIREは、幸也、橘舞已、MIEの3名でステージに立っていた。前回に引き続き、サポートギターを一也(HOLLOWGRAM/Kαin)が担当。マニピュレートにはATSUSHI(Kαin)も加わり、3人を支えていた。

  先に伝えておくと、リハビリテーションライブと銘打っているように、セットリストは、前回からの流れを受け継いでいる。つまり、今ある形を、さらに強化しようという狙いだ。その上で、新たな楽曲も加えていた。ここからは、Sold Outした公演当日の模様を伝えたい。

 この日の幕開けで嬉しかった光景がある。『Re_deem2026』(SE)に乗せてメンバーが登場する際に、背景のスクリーンにメンバーの顔を一人ひとり映し出したときのことだった。休養中の秀朗の姿が映し出されたとき、大勢の人たちが「秀朗!」とステージに向かって叫んでいた。目の前にはいないだけで、ここに集まった人たちに秀朗の姿はしっかりと見えていた。そう信じたい…。

 幸也の呟く言葉を、重厚な音が包み込む。MIEのドラムが唸るような音を叩き出すや、荒ぶる感情を具現化するように弦楽器陣が音を唸らせた。幸也が「JUST DREAMS BURN DOWN」と叫ぶ。その言葉を合図に、『DREAMS BURN DOWN』が勢いよく駆けだした。その演奏に煽られ、フロア中から拳が突き上がり、荒ぶる声が張り上がる。フロントに立つ幸也は、強い覚悟を背負いながらその想いを気迫に変えて観客たちへ迫っていた。なんて雄々しくて攻撃的な姿だ。鬼気せまる感情で攻めるからこそ、ときにユニゾンで響かせる橘舞已と一也の奏でる野太いギターの音色が心地よく胸を揺さぶった。間奏でも一也が冴え渡るフレーズを響かせれば、それを橘舞已が受け止めて高みへと導いていった。その背景で、終始アタックの強いビートを打ち鳴らすMIEの姿も印象的だ。最後に幸也が呟いた「叶わない夢でも…」の言葉。そこへ…。

  MIEのドラムを合図に、さらに勢いを増すように『SHADES』が飛び出した。いつも通りの展開だ。それをわかっていながらも、この流れが気持ちを一層騒がせる。相手を喰らう勢いで観客たちへ挑みかかる幸也。回数を重ねるごとに、その演奏は名刀の刃を研ぐように、鋭く研ぎ澄まされていく。この曲でも、橘舞已と一也が高揚へと導く旋律をリフレインさせながら、観客たちの感情を奮い立てていった。2本のギターが音を重ねながら感情を高ぶらせる、その展開が心を騒がせる。誰もが、胸の奥から次々と沸き立つ衝動に気持ちを熱くしていた。たとえ火傷しそうな高揚感だろうとも、その熱源が欲しくて手を高く伸ばし続けていた。

 MCでは、秀朗の現状について幸也が説明しつつ、「きっと好転するだろうと信じて、今、俺たちのやれることを全力でやろうと決意した。」と語っていた。秀朗のことを案じながら、バンドは短期間でさまざまな壁を乗り越えてきたからこそ、こうやってライブを行えていることに安堵していた。そのうえで、集まった人たちに向けて、「ともに全力で挑みながらも、一緒に楽しもう」と声をかけてきた。幸也の語った「永遠に続くものはないように、今日という日も今日しかない。だから俺たちは、今日できることを全力でやりきる。今日しか観られないD≒SIREを楽しんでくれ。」の言葉が、胸を熱く揺さぶった。

 次にD≒SIREは、「失くしたくないものを失いそうになったときに書いた」『LEAVE ME』を奏でてくれた。MIEのドラムが駆け出すのに合わせて躍動し始めた演奏。幸也は胸の奥にしまっていた想いを引き出すように、心を濡らした声で「行かないで」と、慟哭にも似た声を響かせていた。曲ごとに切り替わる映像の演出にも視線が惹かれるが、この曲でも、MIEの気迫みなぎるドラムのビートが、他のメンバーの気持ちの背中をずっと蹴り続けていた。「行かないで」と、観客たちも一緒になって歌う姿も印象的だ。この曲の演奏中ずっと、高く突き上がった拳がフロアで揺れていた。

 そこからの、『CALL FOR YOU』へと続くスリリングな展開が、心地よい緊張感をこの場に張り巡らせた。唸りを上げて吠える、心の雄叫びのような橘舞已のギターの旋律も印象的だ。スタンドに付けたマイクを強くギュッと握りしめ、胸が張り裂けんばかりの思いをぶつける幸也。その姿に向けて、多くの手が、その思いをつかもうと伸びていた。「このままただ貴方だけを…」と叫ぶ、幸也の悲痛な声。

 そこへ流れだした、優しくて温かなギターの旋律。その音へ呼ばれるように、幸也が「誰も愛せないなら 口づけが命の火を灯す中」とゆっくりと歌いだした。そこへ猛々しいMIEのドラムのビートを合図に演奏が轟き、『CURSE』へ。失意の底で身悶えながら、傷だらけの心の痛みをさらけ出すように幸也は歌う。悲嘆に暮れる彼の感情へ、荒々しくもソリッドな演奏が、ヒリヒリとした刺激を刻み込んでいく。失望とわずかな希望が錯綜する心模様へ光を射していく幸也の歌声が、観客たちの心を引き寄せる。だから、フロアからずっと熱い手がステージに向かって伸び続けていた。

 前回もKαinの『NUMBER SIXXX.』をカバーしていたが、この日は、Kαinの『Inlandempire#02』を、この日のためだけの『Inlandempire#03』として届けてくれた。重厚かつ雄々しい楽曲だ。気持ちをたぎらせる野生のビートに魂を掻き立てられた観客たちが、雄々しい声を張り上げ出す。スケールの大きい演奏が折り重なる曲の上で、一也と橘舞已のギターが交錯しながら雄大な音の景観を描き出す。雄大な演奏に乗せてクラップし続ける観客たち。『Inlandempire#03』が、この場にいる人たちを異境の世界へと飲み込んでいった。思いをこぼすように歌う幸也の声を、一つとしてこぼしたくない。だから、大勢の人たちが強く手を打ち鳴らしながらも、こぼれ落ちる一つひとつの言葉をしっかりと受け止めていた。終盤に向かうにつれて熱を帯びて高まる演奏。フロアからも雄々しい声と拳が止めどなく突き上がっていた。そこへ…。

 「激しいのいこうか」の声を合図に、幸也が「人工楽園」と叫ぶ。その声を受けたMIEのドラムが轟くや、『人工楽園』へ。鋭気に満ちた猛々しい演奏が襲いかかる。気迫を増した歌声と演奏の衝撃に負けずと、フロアからもすさまじい勢いで拳が突き上がり、荒々しい声が上がり続ける。誰もが剥き出しの感情を激しくぶつけ合っていた。橘舞已の攻撃的なギターソロ、それを受けた一也の甘くメロウな旋律もスパイスにしながらも、D≒SIREはこの曲の間中ずっと、荒ぶる感情を殴りつけていた。

 「さぁ、もっと楽しんでいってくれ、JESUS CHRIST」「LOVE FOR YOU」の声のやり取りを合図に、さらに速度と熱を上げて、彼らは『JESUS』をぶつけてきた。観客たちの叫ぶ「JESUS」の声を受け、「I Wanna Be Your"Only"」と歌う幸也。この場には、沸き立つ感情と感情を戦わせるバトルが生まれていた。互いを求め合う思いを止められないのなら、このまま熱狂に溺れていたい。心刺す痛みを覚えるたびに、恍惚と、生きている実感を覚えられる。それこそが、今のD≒SIREと観客たちが求愛し合う理由だ。だから「止められない」衝動を、「ずっとこのまま」求め続けていたい。

 「まだやれるのかい、もう1曲いっていいのかい」。幸也が、いや、D≒SIREが剥きだした感情を大胆にぶつけて観客たちに求めたのは、暴欲的な接吻だった。全身を切り刻み、震え上がるほど強烈に迫る『KISS』の衝撃を受け、感情を燃えたぎらせた観客たちも、暴欲的な思いで彼らを求めていた。幸也と観客たちが熱い思いを交わし合う「もう抱きしめて もう離さないで」「Don't Stop Your Last Kiss」のやり取り。幸也は、号泣にも似た声で歌い叫んでいた。その激しい求め愛こそが、裸になってすべてをさらけ出した今のD≒SIREの姿だ。

 感情が高ぶり、身体を火照らせた観客たちを、最後に『静夢』を奏でて、彼らは優しく抱きしめていった。ときに暴欲的に、ときに甘えるように優しく手を伸ばすなど、感情に緩急をつけたその展開がドラマチックだ。ずっと気持ちを振り回す恋愛のように、身勝手だけど、でも、支え合わずにいられないこの関係に深く、もっと深く溺れていたい。サビに描き出した「重ねた口唇で」「伝えたい」や「繋いだ指先で」「伝えたい」などのやりとりも、いつも以上に情熱的だ。ほとばしる感情を隠すことなく、裸のまま、互いにさらけ出しては、ときにぶつけ合い、殴り合い、抱きしめ合い、涙していく。それが、今のD≒SIREのライブだ。

 『Re_quiem』(SE)に乗せて、ステージから去るメンバー。その姿に向けて、たくさんの温かい拍手が鳴り響いていた。

  『Re_frain』(SE)が流れ出すのに合わせて、第二部へ。再びメンバーがステージに姿を現した。ここでも、映像に映し出された秀朗の姿に向けて「秀朗!」と叫ぶ声が飛び交っていたのが、嬉しい。

  最初に届けたのが、前回のライブで初披露した『Asleep』だ。実はD≒SIRE以前から存在するという橘舞已の作曲による『Asleep』は、エスニックな音色とエレクトロな要素が絡み合いニューロマンティックな香りも漂うスタイリッシュでアーバンな楽曲だ。軽やかに駆ける演奏ながら、悲しみや刹那を抱いた世界観は、やはりどこかD≒SIREらしい。10代の頃に書いたという歌詞を、言葉のひと言ひと言を大切に紡ぐように歌う幸也の姿も印象的だ。美しく、幻想的で耽美な香りが漂う楽曲ながら、そこへアタックの強いビートが重なることで、ただ穏やかに心揺らすだけではない、気持ちを揺さぶる衝撃を与えてくれたのが嬉しい。だからフロアでも、ずっと高く掲げられた手が優しく揺れ続けていた。

 MCでは、秀朗の近況について語っていた。病気を発表して以降も、頻繁に秀朗と連絡は取れていることを幸也が報告していた。幸也いわく、メンバーの中で一番気持ちが前向きで前のめりなのが秀朗らしい。その報告に安心を覚える人たちも多かったようだ。

  次に届けたのが、懐かしき『MOON』だった。あえて、今、このタイミングで『MOON』を持ってきたところに、いろんな想像を巡らせてしまう。たとえ(現在は)見えなくても、その先に確かなランドマークを見据えているからこそ、今の心境と重ね合わせて、希望を込めてこの曲を持ってきたのかとも考えていた。長くD≒SIREを応援している人たちは、意外な楽曲の演奏に無邪気にはしゃいでいた。

 さらに、こちらも前回のライブで初披露した『Water Ballet』を、ここで叩きつけてきた。風を切るように駆けるノリの良い楽曲の上で、歌う詩人と化した幸也の胸を揺さぶる声と、タイトでソリッドな演奏をつかむように、フロアのあちこちで手が揺れていた。この曲でも幸也は気持ちも身体も前のめりに、荒ぶる詩人となり、感情的な言葉の礫を次々とぶつけていた。なんて心を躍らせ、気持ちを湧き立てる、美しい高揚感だ。それが嬉しい。そして…。

 最後にD≒SIREは、すべてを蒼い衝動で塗り潰すように『xxxBLUE』を歌い奏でてくれた。耳に馴染んだピアノの音色が呼び水となり、ふたたび気持ちを掻き立てる。歌や演奏に合わせて、フロアから飛び交う雄々しい声と数多くの拳。互いにずっと離さない、離したくない思いで。いや、もう二度と失いたくないこの気持ちを、接吻以上に燃え盛る感情を交わして確かめあっていた。「離れない離さないずっと」と歌うように、どんな絶望や悲しみがまた襲いかかろうとも、ふたたび繋いだこの気持ちを、たとえ歪な形でもいいからずっと結びあっていたい。そんな終わらない、けっして解(ほど)けない絆を深くしていく約束の歌として、この日の『xxxBLUE』が胸に届いていた。

 場内に生まれた熱狂を抱きしめるように流れ出した『Re_quiem』に乗せ、別れ際に幸也が投げかけた「決めたところまでしっかり歩いていきますので、また良かったら会いにきてください。」「今日が最後じゃありませんように。」の言葉。その想いを約束の指切りにして、今宵の幕を閉じていった。

  次は、10月10日の高田馬場CLUB PHASE。このシリーズの最後であり、幸也が盟友と時を重ねてきた大切な日だ。しかもこの日は、無料公演。この機会にD≒SIREを目にして、狂おしく立てた音の爪にひっかかれるまま、胸に傷跡を残してくれ。きっと、あなたの心を繋ぎ止めてくれるはずだ。


PHOTO:堀江亮佑(GT LIVE TOKYO)

TEXT:長澤智典


【ライブスケジュール】

2026年10月10日(土)高田馬場CLUB PHASE【無料公演】※幸也、聖詩、橘舞已、MIEでの出演

※無料チケット予約URL:https://tiget.net/events/525705


2027年05月03日(月祝)新宿ReNYワンマン ※幸也、聖詩、橘舞已、秀朗、MIEでの出演予定


【Infomation】

https://tmfr.net/d_sire/


【ファーストアルバム「終末の情景」サブスク解禁】

https://lnk.to/s4xZcy


【D≒SIRE(デザイア)】

1993年10月活動開始。

1994年にシンコーミュージック傘下のインディーズレーベルよりCDデビュー。

当時のメンバーは YUKIYA(Vo)、KIYOSHI(Gt)、MAI(Gt)、HIDEROW(Ba)、MIE(Ds)。

1995年8月5日に発売された1stアルバム「終末の情景」はオリコンインディーズチャート1位を記録。


2026年9月22日(火)東京・六本木GT LIVE TOKYO公演セットリスト

『Re_deem2026』(SE)

『DREAMS BURN DOWN』

『SHADES』

MC

『LEAVE ME』

『CALL FOR YOU』

『CURSE』

『Inlandempire#03』(Kαinカバー)

『人工楽園』

『JESUS』

『KISS』

『静夢』

『Re_quiem』(SE)

-ENCORE-

『Re_frain』(SE)

『Asleep』

MC

『MOON』

『Water Ballet』

『xxxBLUE』

『Re_quiem』(SE)