INTERVIEW

佐倉仁が語るSakuraCasterやハイパーバリトンギターを用いた、新しい音楽との向きあい方。

 

佐倉仁には"表現者"であり"創世者"という言葉が良く似合う。アーティスト(創造者)としての顔。そしてもう一つ、佐倉仁には"創作者"としての顔がある。それが、みずから楽器を作り上げるクリエイターという表情だ。楽器メーカー"The Baritonist."を設立。いわゆる楽器を作るクラフトマン(職人)ではなく、独自の楽器を創作しているように、そこにも「ゼロから有を生み出すアーティスト」としての姿勢が反映されている。
  ギターとベースの両方を担う6弦楽器の「ハイパーバリトンギター」と、3弦楽器「SakuraCaster」。佐倉仁みずから創作した2 STYLEの楽器を駆使し、彼は創作やライブ活動を行なえば、"The Baritonist."ブランドが普及し始めた。そのスタートとなったのが、1月にLAで催された全米最大の楽器SHOWと言われている「NAMM Show」へのブースの
出展だった。
  現地では、訪れた楽器メーカーやアーティストたちに「ハイパーバリトンギター」と「SakuraCaster」の試演をしてもらうだけではなく、みずからも特設ステージを通して演奏。さらに、他の出展者たちやゲスト・ミュージシャンたちとSakuraCasterを手に即席のセッション演奏を幾つも行なってきた。中でも、LED ZEPPELINのロバート・プラントが実力を認めた10歳の天才ドラマーよよか、氷室京介やB'zの作品にも参加しているLA在住のギタリストYukihide"YT"TakiyamaとのSakuraCasterを用いたセッション演奏は、現地でも大きな話題を集めていた。
  先日も、新曲「kimi」を配信リリースしたばかり。2月25日には、四谷Honey Burstを舞台に主催シリーズ・イベント「NEXT GENERATION vol.5」の開催も控えている。そんな佐倉仁の想いを、ここで紹介しよう。

SakuraCasterとハイパーバリトンギターが、全米最大の楽器SHOWで大絶賛!!

――佐倉さん、1月にLAで行なわれた全米最大の楽器SHOWと呼ばれる「NAMM Show」へ、みずから設立した楽器ブランド"The Baritonist."のプレゼンを兼ね、ブースを出展。みずからも、現地へ足を運びプロモーションしてきたと伺いました。
佐倉  
今回の目的は、設立した"The Baritonist."ブランドの楽器を世界中にお披露目すること。そのために、僕自身が作り上げたオリジナル楽器「ハイパーバリトンギター」と「SakuraCaster」を手に、2つの楽器をアピールしてきました。(ブースは友人で元VOXのトップエンジニアのLEE氏の立ち上げたLEE CUSTOM AMPLIFIERと共同出展)
――ハイパーバリトンギターもSakuraCasterも、類似する楽器がない完全オリジナル楽器(正確に言うなら大元にあるのはギターとベース。それを同時に鳴らせるのが"The Baritonist."の楽器たちになる)。みなさんから、どんな反応が返ってきていたのでしょうか。
佐倉  今回はSakuraCasterをメインにプレゼンした形でしたが、実際に楽器を演奏した方々が口にしていたのが「DIFFERENT」(異なる/独特の)という言葉。みんながみんな「これは他にはない、唯一の楽器だね」と評してくれたのは嬉しい言葉でしたし、みんなが楽しそうに演奏してくれたのも印象深く目に焼きついた光景でした。同時に、僕自身もSakuraCasterの新たな可能性を知ることが出来た貴重な経験にもなりました。
――そこ、気になります。
佐倉  僕自身がSakuraCasteを創作するうえで想定していたのが、ギターとベースを同時に演奏できることに加え、初心者でも簡単に演奏できる楽器という特性を生かせることから、弾き語りはもちろん、ビートロックやパンクロックを演奏する人たちに少ない編成でも骨太な音を奏でる楽器として使って欲しいという想いでした。でもNAMM ShowのブースでSakuraCasterを嬉々とした表情で弾いていたのが、主にヘヴィメタルやラウドロック系のミュージシャンたちであり、そういう音を支えるアンプメーカーの人たち。彼らの演奏する手法を見て、僕自身、SakuraCasterの新たな可能性を感じ、より幅広い層へSakuraCasterやハイパーバリトンギターをアピールしていけるチャンスをつかむことが出来た。そこの成果は、僕自身嬉しい誤算でした。
――ヘヴィメタルやラウドロックのほうが世界的な広がりという面では大きい市場ですからね。そこを支える人たちにSakuraCasterが支持されたことは、その世界でも演奏する人たちが生まれる可能性を持っているということですよね。
佐倉  
そうしていきたいですね。それと、みなさんSakuraCasterが3弦楽器であることにも注目してくれました。よく聞かれたのが、「これは、日本の新しい三味線なのか」ということ。そのたびに「三味線からインスパイアを受けて作った楽器」と前置きをしたうえで、「SakuraCasterは、ギターとベースを同時に弾けるうえに、ポジショニングも簡単だから、初心者でもすぐに楽器を弾けるようになる入門楽器でもある」ということを説明し続けました。SakuraCasterもハイパーバリトンギターもプレイした人たちみんなが新たな楽器としての可能性に気付いて興味深く演奏をしてくれたように、近い時期に有名なアーティストの方々へモニターになってもらい、実際にライブやレコーディングでSakuraCasterやハイパーバリトンギターを使っていただこうかなとも考えています。それと、もう一つ嬉しかったのが、同じくNAMM Showに出展していた日本の楽器やアンプメーカーの方々にも、SakuraCasterとハイパーバリトンギターを気に入っていただけたこと。そこから、現地でのセッション演奏の際に、それぞれのブースのステージを借りてのセッション演奏も行なえば、時にセッション用に楽器やアンプまでお借りしてというように、今後に繋がる深い交流を持てたのも大きな成果でした。一度、セッション演奏後、「今晩一緒に打ち上げやりましょうか」と声をかけたら、お店に入りきれないほどの人たちが集まり飽和状態になったなんて思い出も作ってきましたからね。

SakuraCasterを学校の教育機材に。佐倉仁、学校の設立に向けて動く!!

――現地では、SakuraCasterを中心に幾つもセッション演奏をしてきたそうですね。中でも、YouTube上にもアップしているように、10歳の天才ドラマーよよかちゃん、LA在住のギタリストYukihide"YT"Takiyamaさんとのセッション演奏では、佐倉さん自身、本当に楽しそうにプレイしていましたよね。
佐倉  よよかちゃんとは、ちょうどNAMM Showへ飛び立つ前に、彼女が現地でセッションしたいとtwitter上へ書いてあった書き込みを見て「ぜひ、一緒にどうですか?」とコンタクトを取ったところ、「ぜひやりましょう!」という声をいただけたことがきっかけでした。それで、現地で会ってという関係なんだけど。彼女のお父さんが、元々ヴォーカリストだった方で、そのお父さんも含めてセッションも行なえば、YT(Yukihide"YT"Takiyama)さんとも交友を深めてきました。嬉しい驚きだったのが、よよかちゃんもYTさんも、「じゃあ、何々の曲をセッションしようか」と決めたとたん演奏を器用にこなしてゆく、その対応力のセンスと技術力。僕はある程度準備して臨んだんだけど、そういう感じでサクッとできる世界的に認められた人たちとのレベル高いセッションに加われたことはとても良い刺激でしたし、世界的に有名なお二人と共演することで、よりーSakuraCasterの魅力を世界中へアピールする機会になったのも嬉しい経験になりました。
――The Baritonist.としては、今後も、いろんな楽器フェアに参加していくのでしょうか?
佐倉  今、僕自身の楽曲を中国でもリリースしようという動きもあるように、中国の楽器フェアにも出展しようかと企ててはいます。もちろん国内でも動きますが、むしろ"The Baritonist."も、僕自身に関しても、積極的に海外を攻めていきたいなと思っています。
――佐倉さんの場合、アーティストと楽器ブランドのオーナー、二つの視点から攻めていけますもんね。
佐倉  そこは自分の強みにしていること。自分自身が楽器を作った人でありながら、それを歌い奏でる人でもあるように、僕自身がSakuraCasterやハイパーバリトンギターを演奏しながらセッションすることで、より明瞭に楽器の魅力を伝えることができますからね。さらに、僕自身の音楽性の面でも、NAMM Showでの体験をもとに、SakuraCasterの新たな魅力を生かすように、もっとラウドな楽曲を表現しても良いのかなとも思っていて。その辺も、今後はプロデューサー陣と煮詰めながら上手く取り入れていこうかなと思っています。
――SakuraCasterに関しては、国内でも新しい動きが生まれているとお聞きしました。
佐倉  某有名カラオケチェーン店の役員の方が気に入ってくださり、まずは旗艦店を通してですが、そのお店へSakuraCasterを置き、その曲に合わせたタブ譜も画面に提示、みんなに歌いながらSakuraCasterを弾いてもらおうという企画をやる形で動いています。他にも、学校へSakuraCasterを寄贈。そこで弦楽器を学ぶ最初のとっかかりとして、誰でも気軽に、簡単に覚えられるSakuraCasterを弾きながら音楽の楽しさを知ってもらおうということで具体的に動いています。
――生徒たちが、SakuraCasterを弾いて楽器を学べるって、すごいことですよね。
佐倉  
学校が教える音楽を通した楽器演奏って、弦楽器はハードルが高いイメージがあるせいか、せいぜい縦笛やピアニカなどじゃないですか。だけど、誰もが簡単にコードを覚えるどころか、まったくの初心者でもフレットをずらして鳴らせば音楽になるーSakuraCasterを用いれば、弦楽器の入り口はさらにハードルの低いものになる。そのうえで、弦楽器の面白さに目覚めた生徒たちがギターやベースに転向していけばいいし、改めてーSakuraCasterへ戻ってきてくれたら尚更嬉しいこと。そうやって、音楽文化や楽器文化の一つとしてSakuraCasterを根付かせてゆく動きが、今、具体的に進行しています。
――以前から「スクールを設立する」とおっしゃられていましたが、そのスケールが大きくなりだしているんですね。
佐倉  すでに今、学校と提携をしながら、卒業をすると高卒の資格を取れる音楽学校を仕掛けています。いわゆる音楽の専門学校とは異なり、普通に授業もあったうえで、音楽を学べる環境も学校に用意。そこを通して、音楽の才能を持った人たちを育成し、輩出していくつもりです。
――それ、とても素晴らしいです。
佐倉  才能を持った子たちや、その可能性を秘めた子たち、音楽へ意欲を向ける子たちの才能や感覚を伸ばしてあげる環境を学校という形を通して作り、育てていきたい。そうやって次世代を担うアーティストたちの育成も行なえば、表舞台ではなく裏方として音楽へ携わりたい人たちにも向け、学校を卒業して以降も音楽業界へ携わっていけるパイプ作りも行なっているように、これまでの日本の音楽業界の有り方を変えていく道筋を今、作っているところです。

出演者どうしが交流を深め音楽仲間になれるイベント、それが「NEXT GENERATION」。

――佐倉さんは、定期的に主催イベント「NEXT GENERATION」も行なっています。2月25日には、四谷Honey Burstを舞台に主催シリーズ・イベント「NEXT GENERATION vol.5」の開催も控えています。 
佐倉  この日は、「ドラゴンボール改」のテーマ曲などを歌うアニソンシンガーの谷本貴義さんをゲストに迎え、SHU&Sashi・On a Cloud・YUTARO・ASTRA・wakabo、そして佐倉仁が出演する形で開催します。谷本さんとは、以前にイベントで共演したことがある関係。そのときから仲良くさせていただけるだけでなく、今や、互いに忌憚なく想いを話しあえる関係でありながらも、彼自身アニソンの世界の最前線でズーッと活躍している方だけに、今回の再共演がとても楽しみです。
――「NEXT GENERATION」の特徴の一つが、イベントの開催前にもみんなで集まり一緒に食事をし、セッションを行なえば、イベント後も打ち上げの場を通し、互いの交友を深め合っているところ。
佐倉  最近のイベントは、出演者どうしの繋がりが希薄だと思うんですよね。それこそ、ノルマを払ってライブをやり、それで終わり。そこから繋がりが生まれることもなくみたいな活動って建設的とは言えないじゃないですか。だからこそ僕は、僕の持っている工房へみんなを呼び、そこで一緒にご飯を食べながらみんなで夢を語り合えば、そこに置いてある楽器を使い、その場でのセッション演奏や、参加者たちの演奏を楽しむのも素敵なことだなと思い、そういう場を毎回設けています。以前にも、ゲストで参加してくださった堀江淳さんが食事会の場にも参加してくださり、みんなとご飯を食べて会話を重ねるのはもちろん、ご本人からのご厚意によりその場で「メモリーグラス」を歌ってくださいました。そこで知るプロの方のレベルに刺激を受け、僕も含め、本番へ向けてより気持ちを高めていった出演者たちもいます。イベント後の打ち上げでも反省会を兼ね、より先へ向けての意識をお互いに高め合うために、アーティストどうしの交流を深めあうことも毎回しています。次の「NEXT GENERATION」も共演する人に至っては、そこで、より強い仲間意識も芽生えていましたからね。そうやって「みんなで音楽を楽しむ場」を、僕はこれからも「NEXT GENERATION」を通して育み続けていきたいなと思っています。

最新配信ナンバー「kimi」に込めた想い、隠された背景。

――佐倉さんは現在、「Diablo〜終わらない愛の歌〜」を配信リリース中。そこへさらに「kimi」も加えました。「kimi」は佐倉さんが作った楽曲ではなく、提供歌なんですね。
佐倉  この楽曲を歌うまでにも、とある物語がありました。一度音楽活動を辞める前の僕は自作曲へ強いこだわりがあったことから、他の人の楽曲を歌うことは一切しませんでした。だけど、音楽活動を再開したとき、そこのこだわりを取り払い、胸を打つ本当に良い楽曲であるなら、僕以外の人が作った楽曲であろうと歌おうと決めました。そんな中で耳にしたのが、「kimi」でした。
  初めて「kimi」へ触れたとき、感動はもちろん。僕は、なぜか涙を流しながらその歌を聞いていました。その理由が自分でもわからなくて。でも、どうしても自分もこの曲を歌いたくなり、「ぜひ、歌わせてください」とお願いをしようという強い想いから、「kimi」を作った人たちの連絡先を調べました。そのときに出会ったのが今現在、作詞・イベントプランニングをお願いしている池永康記さんであり、僕のライブでベースを弾いてくださっているあっきーさんでした。
  僕が「kimi」に抱いていたのは、君のことを夜中ずっと考えながら悶々としていれば、君に言いたい想いをぶつけてゆく「君に向けたラブソング」という印象でした。でも、話を聞いたら、じつはkimiさんというヴォーカルの方がいたんだけど、その方が病気で亡くなられてしまって。そのkimiさんへ向けた追悼歌として誕生したのが「kimi」だったことを知りました。その楽曲を歌っていたのが、kimiさんと一緒に番組をやっていた親友のヴォーカリストの方。その背景を知ったこともあって、より「kimi」に対する思い入れが深くなりましたからね。
  これまでもライブを通し「kimi」を歌ってきましたが、今回、音源にするにあたって、さまざまな想いも受け止めたうえで、さらに僕なりの想いを込めて「kimi」を歌わせていただきました。原曲はロックテイストの強い形ですが、佐倉仁バージョンではEDM色を生かした形で作りあげています。
  これからも佐倉仁として、オリジナル曲はもちろんのこと、自分が本当に心打たれた楽曲に関しては歌っていこうと思っていますし、僕の作り上げたオリジナルの楽器であるハイパーバリトンギターやSakuraCasterを用いながら、これからもいろんな楽曲をみなさんにお届けしていくつもりです。

TEXT:長澤智典

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佐倉仁 Showroom「佐倉仁のカオスワールド」
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★映像★

NAMM Show 2020 Report
https://youtu.be/f9voayqpk8I
「佐倉仁のカオスワールドスペシャル」in NAMM Show
https://youtu.be/PMl_zAPk784
ハイパーバリトンギター Introduction
https://www.youtube.com/watch?v=gnAQx2llIYs&feature=youtu.be

★インフォメーション★

2/25(火)桜人祭presents
「NEXT GENERATION vol.5」
四谷HoneyBurst
Open17:00/Start17:30
前売2,500/当日3,000(+1D)
出演:SHU&Sashi・On a Cloud・YUTARO・ASTRA・wakabo・佐倉仁
ゲスト:谷本貴義
MC:見物俊幸

Showroom配信「佐倉仁のカオスワールド」毎週木曜日19:00~
NAMM Showにて記念すべき第一回目の配信を行ったあの番組が、
今後も毎週ゲストをお迎えしてShowroomにて定期配信を行います!
https://www.showroom-live.com/ZinSakura
※ルームを事前にフォローすると配信通知が届きます。

佐倉仁「kimi」各音楽配信サービスにて楽曲配信中!
https://linkco.re/mt6R5Vu9