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Chanty 12th Anniversary Oneman 「Chantyの世界へようこそ」 ONEMAN TOUR 2025 円環彷徨う五線譜は今宵月夜に誰を待つ GRAND FINAL 『2025.9.16 Spotify O-WEST』ライブレポート!

Chanty

Chanty 12周年。

「12」という数字は“完全性や調和”“新しい始まり”を象徴する、特別な意味を持つ縁起の良い数字とされているそうだ。

1年=12ヶ月、星座=12星座、干支=十二支、そして時計がひとまわりして円を描くのも12時間。

そんな数字の力が作用したのか、12周年へと向かうChantyは様々な場面で“円環”に導かれるように歩みを進めていた。

たくさんの再会を果たし、19th Single『円環彷徨う五線譜』を生み出して、辿り着いた12周年の会場は2年ぶりに周年公演の原点とも言えるSpotify O-WEST。

昨年同様、前日の9月15日にはshota(Dr.)の生誕祭も開催し、バンドもファンもお祝いモード全開で迎えた記念日。

12年の月日で描いた360度の美しい円環の到達点、そして“361度目”への第一歩を踏み出す大切な1日に胸が高鳴る。

定刻、秒針が時を刻む音が響く。

ゆっくりと開かれた暗幕の向こうには、左右に3本ずつ聳え立つフープ(※柱のような大きなオブジェ)が映えるステージ。黒と赤が基調の新衣装を纏った楽器陣が奏でる音色が流れ出し、芥(Vo.)がセンターマイクへと歩み寄る。オープニングに選ばれたのは、『愛哀想奏』。

「2025年9月16日・Spotify O-WEST。Chantyの世界へようこそ。」愛情と包容力に満ちた楽曲が、空間を染め上げていく。

“わたしがいなくてもあなたは生きるし あなたがいなくてもわたしは生きるけど 「それだけ」はなんかさ 認めたくないから またとない今日という日を 逃したくはないんだよ”

このバンドの真理とも言えるメッセージを乗せた歌詞と楽曲の持つスケール感、そして力強く説得力を増した歌声と演奏に、惹き込まれ心打たれた幕開けだった。

「さぁ、飛び立とうかWEST!」shotaが大空へ飛躍するシンバルを打ち鳴らし、弾むピアノの音色から『群青』へ。

「声を聞かせて!」と呼び掛ければ、一斉に声と拳が突き上がる。それに後押しされるように、真っ青な空高くChantyのエンジンが加速していくのを感じてワクワクしてしまう。

「on drums、shota! on bass、野中 拓!on guitar、白!on vocal、芥!そして、“あなたたち”でChantyです!聞こえてるか?見えてるか?その声くれよ!預けてくれよ!」ギターを手にした芥が叫んだ『透明人間』、激しいベースプレイと煽りで野中(Ba.)が牽引し、全力で応えるフロアの様子に頷いた白(Gu.)のギターが唸りを上げれば、会場は一層大きく揺れる。

「楽しむ準備はできてるか?さぁ、踊りましょう!」息つく間もなく『空々』へとなだれ込むと、「3.2.1.GO!」の掛け声を合図にオーディエンスは一斉に横モッシュを始めタオルを回し出す。

 “理由なんてものは必要ない この瞬間が全てだろ”

ライヴ開始からここまで、約15分。Chantyと“あなたたち”は感情をぶつけ合いながら、凄まじい熱量のスタートダッシュを見せてくれた。

「2025年9月16日、Spotify O-WEST。Chantyの世界へようこそ!」

改めて呼びかけた芥は、「今日はこの時間を選んで、出会ってくれてどうもありがとうございます!生半可な覚悟で12年やってきたわけではなくて・・・気付いたら、12年経っていました。でも、これって凄く自然なことだと思う。大層な覚悟みたいなもの、無かったわけではないけどさ。それより大切な“会いたいから、会いに来る”“会いたいから、会いに行く”、そんなことの繰り返しで、あっという間に12年が過ぎていました。これもひとえに、目印となって目の前に居てくれる“あなた”のおかげです。どうもありがとう。」と、お礼を伝える。

そして、「最後の曲みたいな雰囲気を出しちゃったけど・・・(笑)」と笑い、ギターをつま弾きながらこう言葉を続けた。

「12年という月日を数時間にまとめることなんてできないから、全部が全部伝わるとは限らないことはわかってる。だけど、今日は誠心誠意、伝えに来ましたので。どうぞよろしくお願いします。それでは、次の曲を聴いてください。『散花』。」

白のギターフレーズが花びらみたいに降り注ぐ『散花』、今日という日を迎えた喜びを分かち合うメンバーたちは、いつも以上にアイコンタクトが多い印象。

視覚と聴覚を鮮やかな彩で染め上げた世界から一転、「あなたのことを“見つけた”。踊りましょう、WEST。」その言葉をきっかけに、パープルとピンクの光が照らし出す空間の表情は、疾走感と緊張感を感じさせる『ミツケタ』によって徐々にあやしげに変化していく。

“狭い路地裏 2人きりの世界 やっとやっと キミを見つけた”

ステージから身を乗り出し客席の最前柵に足を掛けてそう歌った芥が、「暗い路地裏、2人きりの世界。君を見つけたら、なんだかさっきから脳がバラッバラでございまーす・・・。」と呟くようにして始まった『ソラヨミ』。メロディアスなポップさを孕んだメロディーに描かれる、愛と哀と僅かな狂気。真っ赤な空間を貫く雷鳴のようなshotaのドラムとフラッシュライトにクラクラした頭に喝を入れるべく、「もうちょっと欲しいんですけど!やり合いたいんですけど!聞こえるか!」と『不機嫌』を畳みかける。

「別に動いたり動かなかったりなんてどうでもいいんだよ。あなたのすべてを俺にくれ。」

1人も逃さないと言いたげな視線でフロアを見渡す野中、白の勇猛な煽り、触発されたオーディエンスのテンションも上昇の一途を辿っていった。

僅かなインターバルを置いて、白が奏でる叙情的なアルペジオがまた場内の空気を一変させた『迷語』。

「その声も、いつか無いものになってしまうのかな?」ふと口をついて出た言葉が胸に刺さる。ドラマティックなドラムとベース、切なく張り詰めた歌声とギター。

“明日が来るとは限らないし伝えないとな”

今のChantyの魅力や強みを再確認させてくれる楽曲に滲む、静かな決意が美しかった。

間を置かず、ピンスポットに照らされた芥が再びアコギをかき鳴らして「『綺麗事』。」とタイトルコール。

“一方的な感情を伝えたくなったんだ 綺麗事にしてもいいよ”

光に満ちたステージの上で、「いつでもここに居るから!」と叫ぶように歌う芥。「当たり前にそばに居る存在になりたい。」そう言い続けてきたバンドの想いは、今も変わらずここに在る。

12年も時が流れれば、自分たちの力では解決できない出来事に直面することもあったけれど。続いて演奏された『君のいない世界』を聴きながら、この曲が誕生したコロナ禍の不安を思い返す。

“姿形を変えた未来の片隅で また続きを描けますように”

祈りにも似たその願いは、彼らが諦めず歩み続けたからこそ叶ったものだ。

「改めて、2025年9月16日Spotify O-WEST、ここまで生きて辿り着いてくれてどうもありがとう。」

「そろそろあなたの声を聴きたいんですが、準備はよろしいでしょうか?O-WEST!ぼさっとすんなよ、あっという間に終わっちまうぞ!今日一番のでっかい声、期待してます!出番です!」フロアから返された空まで届きそうな声に、芥も思わず目を大きくして拍手を送った『Emaj7』。

“なんとなくかき鳴らすイーメジャーセブンスが どこかへ連れてってくれる気がしたんだ”

オレンジの光射し込む温かな夕暮れ、かき鳴らしたギターから生まれた曲達と共に歩んできた道のりと、この先も続いていく旅路。「まだまだ行くよ、WESTついてこい。」力強い口調で告げて、shotaのドラミングが冴える『最低』へ。

「どこへだって行けます、あなたが居たら最強です。もっともっと僕らも最強になってあなたに追いつくから、見本を見せてください。よろしく!」手拍子とジャンプで共にライヴを創るオーディエンスたちを眺め、心から幸せそうな笑顔を浮かべるメンバーたち。

それでも、お互いにまだまだ満足するわけにはいかない。

「さぁ、いこうかWEST!もうちょっとやれますかね?そんなことないですか?有り余ってますよね?あなたの『真相』を教えてください。声!!!」真っ赤なライト、箍を外された様子のフロアは拳を振り上げ柵に乗り上げてヘドバンと荒々しく波打つ。「まだまだ」と言わんばかりに、指で頭を打ち挑発的な仕草を見せる白。

「容赦しないぞ、WEST。」攻めの姿勢を緩める気が無い芥が間髪入れずに『衝動的少女』をタイトルコールし、「遠慮すんな、かかってこいよ!!!」とフロント3人がお立ち台へと駆け上がれば、場内のボルテージは最高潮へ。

いつの間にかジャケットを脱ぎ捨てた野中がマイクを掴んで声を上げ、フロアの声と折り畳みも一層激しさを増す。

「一緒にぐちゃぐちゃになりませんか?」嘘偽りのない感情をぶつけ合うメンバーとオーディエンスの勢いは、もう誰にも止められない。会場に居る全員が一体となって生み出すグルーヴの威力に圧倒されるのと同時に、ライヴがどれほど激しい展開になろうともバンドの土台として落ち着きを持ち合わせた揺るぎない演奏を聴かせ続けるshotaの守護神ぶりにも感動を覚えた。

「素晴らしい!“あなた”と俺たちで作ったChantyの世界です!ありがとう!」

ステージが暗転している間も、メンバーを呼ぶ声は途切れることなく響き続ける。

「あっという間に終わってしまう、始まったら。もうこんなに曲をやったんだ。」自分自身に確認するように呟く芥。

「今日、いつもよりあっという間な気がする。いつもがあっという間じゃないわけではないんだけど、時間の感じ方って全然違って。周年って、いろんなことを意識してしまうからさ。いろんな意志でこの場所に歩いてきてくれた人たちが、1年の中で一番多い日だと思う。だから、ひとつになるっていうのはそんなに簡単なことではなくて、本当に綺麗事みたいな夢みたいなものであって。」

いつもChantyを追いかけてくれている人たちは勿論、「周年だから」「周年だけは」とそれぞれの環境の中で様々な想いを抱いてこの場に集ってくれた1人1人を慮るように、真剣な表情で言葉を続ける。

「たぶん、このバンドは過去に固執している部分もあると思う。結成当初から今に至るまで出会ったあなたと、“どの答えが正解なのか?”なんて考えながらここまで来ました。すべてを救おうとしたら、救えたものの純度って下がってしまうこともあって。全部抱きしめようとするたびに、何かが疎かになって・・・そんなことがある瞬間も、重々わかってる。」

少し悔しさが入り混じった熱のこもった声音と噛みしめるような口調に、聞いているこちらも目頭が熱くなってくる。

「だけど、どうしても・・・出会った人すべて、自分たちが奏でた音楽、自分たちの紡いだ言葉、嘘にしたくないから。矛盾もあると思うけど、これからも十人十色のすべてを愛して、“あなた”とChantyの世界を創れたら最高だなと思っています。どうもありがとう。」

12年の間、懸命に守ってきたもの、どうしても守り切れなかったもの。叶えられたこと、叶えたかったこと。出会いと別れを繰り返す中で見た、たくさんの笑顔と涙。その記憶を反芻するように、大切に言葉を選びながら気持ちを伝える芥に、ひとつの物音も立てずじっと聞き入っていたフロアから大きな大きな拍手が送られた。

「ちょっと堅苦しいことを言っちゃったけど。“会いたい”だけでやっているバンドなのであれば・・・まぁ、他にも理由はあるけどね。たぶん、うちらは少なくてもこのジャンルでは負けていないと思っています!大好きだから、ここまで来られました。これからも、1人1人の『好き』をぶつけてください。僕らも、僕らの思うChantyというものへの愛と、“あなたと会いたい”というこの道にそれぞれ向かって、たまたま4人が辿り着いて、たまたまあなたがここに辿り着いて・・・そんなことを繰り返しながら、なんとなく13年、なんとなく14年、なんとなく20年、なんとなく100年!・・・は、無理だけど(笑)。だけど、そんな気持ちでまた会えることを願ってます。改めて、今日に辿り着いてくれてありがとうございました。」

「さぁ、最愛のあなたとぶつけ合うこの曲を届けます!『フライト』!」

イントロからエンジン全開なフロアの声に満面の笑みを浮かべた芥が、野中・白・shotaのもとへと順に歩み寄って歌う。

「ずっとそばにいてくれてありがとう、これからもよろしく!」どんな時も4人を支えて背中を押し続けてくれるその声に、“届いている”と何度も胸を叩いて応えてみせる。

リクエストMV投票でも1位に輝いたChantyの歴史に欠かせない楽曲は、またひとつ大切な思い出を刻み付けてくれた。

「最後にひとことだけ・・・『世界に見捨てられてもきっと音は鳴り止まない』。」

確信に満ちた言葉、彼らの未来を示すような眩い光がステージを包み込む。

フロアとの距離を少しでも縮めようと、しゃがみこんで視線を合わせて歌う芥。多幸感に満ちた光景を愛おしげに見つめる、白と野中とshota。

「WEST、どうもありがとう!Chantyでした!」

この先の世界がどうなっていくのかなんて、誰にもわからないけれど。それでも、どんな時もきっとChantyの音楽は“あなた”のそばにあって、寄り添い救い出してくれる。改めてそう信じることができた、本編のエンディングだった。

すぐさま沸き起こった大きなアンコールの声に応え、この日を記念した懐中時計デザインのTシャツに着替えたメンバーが再びステージへ。

「アンコールありがとうございます、幸せです!ちょっと喋りましょう。」と、まずはリーダーの野中からマイクを取る。

「12周年を迎えました、ありがとうございます!小6です。12年前、Chantyというバンドを組んで・・・正直ね、俺はこんなに長く続くと思っていなかった。それまでの人生でバンドが長く続いた経験が無かったこともあって、2桁続くとは正直思っていなかったし、たぶん当時は長く続けたいとも思えていなかったから。」

12年もの月日をひとつのバンドで積み重ねられた幸せを実感している様子の野中に「オリジナルメンバーの芥さん、そのあたりどうですか?」と問われた芥も、「12年、感慨深いですね。」としみじみ。

「感慨深いよね。2人が結婚して子供が産まれていたら、もう小6だって考えたらヤバくない!?」と、唐突な喩え話を始めた野中にフロアから笑いが起こる。楽しくなった様子で架空の子供の性別や名前の妄想を膨らませるオリメンチームを、白とshotaは笑顔と怪訝さが入り混じった表情で見守っていた(笑)。

芥がステージセットのオブジェを指差し「これ凄いよね、白くんが考えてくれたよね。」と白に話を振ると、「名前は、フープというものです。Chantyにこういう装飾があったら似合うかなと思って探したんですよ。」と話して拍手を浴びる。白の想像通り、フープは様々な場面で照明やメンバーと見事な融合を見せ、効果的にその威力を発揮していた。

楽曲制作のみならず、WEBフライヤーのデザインやステージ装飾など視覚的部分に至るまで率先してバンドをプロデュースしていく白の手腕は本当に素晴らしい。そんな彼が「(フープの中に)頑張れば、人ひとりくらい入れそう。」なんて茶目っ気たっぷりな発想を繰り出せば、すかさず芥が「そこから登場すればよかったね(笑)。」と返して和やかな空気に。

そして、この日が自身初のO-WESTワンマンとなったshota。

最初に「まずは、沢山のスタッフと皆さんのおかげでこの12周年ワンマンをつくれたことを感謝しています!皆さんに拍手を!」と感謝の言葉を述べたしっかり者の最年少は、「実は3年前の9周年のO-WESTの時には加入が決まっていて、“俺も来年はここに立つんだ!”と思いながら観ていたんです。そうしたら、10周年はCLUB CITTA’でやることになって、11周年は渋谷WWWで、12周年でようやく初めてO-WESTワンマンやらせていただきます!ありがとうございます!」と感慨深げに語り、「こうやって続くのも“円環”ですから。」と美しくまとめてみせた。

最後に芥が「他の会場でも周年をやらせてもらったりしましたけど、今日、道玄坂を上がってO-WESTへの道に入る時に、改めて“周年がきたな”と感じました。毎年ちょっと天気が悪くて、若干曇っていたり、会場に着いたらちょっと晴れたり、そんな繰り返しで。今年は、過去の周年と比べても外が暑くないですか?こうやって暑くなっていって、また10年くらい続けたら9月16日が夏になっちゃうのかな?とか思ったりもするけれど、移りゆくもの・変わらないものを繰り返しながら、これからも一緒に歩いていけたら嬉しいです。改めて、どうもありがとうございました!」そう話して、「アンコールでもうちょっと、あなたのその意志と僕らの意志をぶつけ合いたいと思うんですが、準備はよろしいでしょうか?」とフロアの様子を確認する。

「9月16日、Spotify O-WEST!アンコール、本気のあなたを見せてください。どこまでもいこうぜ!その拳、その声、全部預けてください。全部返すから!居場所を教えてくれ、『アイシー』!」

精一杯高く掲げられた、無数の手。「聞かせろ!」フロント3人はお立ち台で戦闘態勢、その背中をshotaのドラミングががっちりと支えれば、今にも天井を突き破りそうなオーディエンスのレスポンスが場内の熱を再び急上昇させていく。

「12年、停止線を飛び越えて、ここまでやってきました!『終わりの始まり』!」

Chantyの始まりの曲、そして変わらぬ想いを込めたかけがえのない曲が、12回目の記念日を祝福するようにエモーショナルに響き渡った。

shotaのシンバルワークの余韻から、ピンスポットに照らされた白のアルペジオに乗せて芥がゆっくりと想いを語る。

「なんとなく、なんとなく、なんとなく・・・なんとなく、ギターを手にして。なんとなく、歌うことを覚えて。なんとなく、ベースを手にして。なんとなく、ドラムを手にした。なんとなく、上京して。なんとなく、たくさんの経験を重ねて。なんとなく、出会った。なんとなく、活動を始めて。なんとなく、あなたが僕らに気付いて。なんとなく、ライヴに行ってみようと思って。なんとなく、音源を聴いてみようと思って。なんとなく、気になって。そんなことの繰り返しで出会った奇跡が、12周年、この場所に描けていると信じています。ちっぽけとか、そうじゃないかなんて関係なくて、人ひとりが出会うことの奇跡をもっともっとちゃんと感じながら会いに行きたいと思います。」

そう言って歌い出した、『よまいごと』。感動的な展開に胸が熱くなる中、バンドインのタイミングで歌と同期がずれて演奏が中断するまさかのハプニングが発生!「ごめん、ずれたー!」と絶叫する芥、「12周年で初めて曲が止まりました!怖いね、音楽って!(笑)」と野中が爆笑すると、12年で初のレアな瞬間を目撃できたフロアは大盛り上がり!

アクシデントすら味方に・・・などと言ってはいけないのかもしれないが、「ありがとう。」と言って演奏し直された『よまいごと』の温かな空気感と、“ここで君が笑って つられて僕も笑ったりして なんとなく訪れた時間を幸せと呼んで”という歌詞があまりにもぴったりとはまっていて、“なんとなく辿り着いた今日”にバンドとファンがまたひとつ特別な記憶を共有できたことに少し嬉しくなってしまったのも事実。

「“思い出にしたくない大切な夜”になりました、どうもありがとう。」はにかんで笑ったメンバーたちも、きっと同じように感じていたのではないだろうか。

「おいWEST、聞こえてるか?ラストだぞ!かかってこい!」

12周年の最後に用意していたのは、『犬小屋より愛を込めて』。拳を振り上げ声を嗄らして全てをぶつけるオーディエンスと、そのすべてを受け止めるメンバーたち。ステージとフロアで交換される熱の塊は、火花となって目に見えそうなほどだった。

最新曲の『愛哀想奏』で始まり、1st Full Albumの1曲目に収録されている『犬小屋より愛を込めて』で終わるセットリストが、美しい円環の到達点が目前に迫っていることを感じさせる。

「on drums、shota! on bass、野中 拓!on guitar、白!on vocal、芥!そして、“あなた”です。Chantyの世界へようこそ。」

エンディングBGMの『フライト』が流れる中、何度も「WEST!」と声を求めて叫んだ芥が深く一礼する。立ち上がりフロアを見渡すshota、感慨深げにベースを掲げる野中、最高のライヴを共に創り上げたオーディエンスに拍手を送る白。

「ありがとうございました!改めて、よく今日に辿り着いてくれました。また自分の中の気持ちとかいろんなものが合致して会える日を創っていけたらいいなと思っています。どうもありがとう!」優しい表情で語り掛けた4人は一列に並び、「Chantyの世界、12年!」の掛け声に合わせてファンと共に大ジャンプをして笑顔で12周年を締め括った。

メンバーがステージを降り暗幕が閉められてもアンコールの声と手拍子は大きくなる一方で、鳴り止む気配すらなかった。心の底からChantyを求めるその想いに応えるように、shotaのバスドラが鳴り響く。勢いよく暗幕が開き、「正真正銘、ラストいけますか!最愛の気持ちを込めて、あなたに贈ります。」と予定外のアンコールとして届けられた『想巡』。

白が『終わりの始まり』をオマージュして作ったこの曲は、現在のChantyが体現する“突き刺す音楽”そのものだと思う。

“あなたはどこにもいかずわたしのそばにいればいい”“誰かで満たされる隙間なんてあるわけないでしょう?”

万感の想いを乗せた歌声と音色の力強さに心が震えた。

「Chantyの世界へようこそ。」真っ直ぐフロアを見つめてそう呟いた芥が「最後にもう1回だけ聞かせてください。」と、メンバー1人1人、そしてファンを大切にコールしていく。

「on drums、shota!on bass、野中 拓!on guitar、白!on vocal、芥!そして、かけがえない“あなた”と共に創りました。Chantyの世界へようこそ!」

約2時間を圧巻の熱量であっという間に駆け抜けた4人は、エンディングBGMをかき消すほどのメンバーコールと拍手に送られながら、360度の円環を美しく描き切って12周年公演の幕を下ろした。

“なんとなく辿り着いた今日はきっと 奇跡ってやつなんだ”

バンドの歩みが長く続けば続くほど、『よまいごと』に綴られたそのフレーズをより強く実感するものなのだろう。

どんなに願っても叶わないことのほうが多い世界、惰性で続けていけるほど甘くないのは言うまでもない。

だからこそ、幾多の壁にぶつかりながらもひとつひとつの出逢いを大切に、真摯に一歩ずつ進んできたバンドが12周年という大きな節目を迎えたことに、心からの感謝の念と賛辞を送りたい。

Chantyが描く円環は、螺旋階段のように少しずつステップアップしながら続いていくのだと思う。円環の2周目、361度目の第一歩は、終演後に発表された次なるONEMAN TOUR『朱、爛々』。2025年11月8日、芥の地元である長野・LIVE HOUSE J公演を皮切りに全国7ヶ所をまわり、ツアーファイナルは2026年2月19日・代官山UNIT。

「今まで以上に、未来を期待してもらえるバンドになりたい。」(芥)

確固たる芯を持ちながら、挑戦することを恐れずに。Chantyの本分をより深く突き詰める13年目の旅路が実り多く幸せなものとなるよう祈りつつ、この先の未来でもまた何度だって待ち合わせをして、共にかけがえのない時間を創り歩いていきたい。

文:富岡 美都(Squeeze Spirits)