the GazettE 【3.10@代々木第一体育館】大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」ライヴレポート
3月10日に代々木第一体育館で【大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」】と銘打った15周年記念公演を行ったthe GazettE。
最近はアニバーサリー・ライブも多様化していて、バンドが歩んできた歴史を見せるパターンを筆頭に、新旧の楽曲を織り交ぜたライブや、「通過点ですから」ということで最新形のライブを見せるなど、アーティストによって様々だ。
そんな中、今回のthe GazettEのライブは、彼らが“大日本異端芸者ガゼット”と名乗っていた時期、つまり結成から3年辺りの最初期にスポットをあてたものとなった。これは、かなり思い切ったアプローチといえる。
the GazettEがより多くのファンを獲得したのは“大日本異端芸者”という肩書を外してからということもあり、今では当時の彼らを知らないファンのほうが多いし、セットリストによっては知らない曲ばかりということにもなりかねないからだ。
どんなライブになるのか想像がつかない状態のまま、代々木第一体育館へと足を運んだ。
開演時間を迎えて暗転した場内にダークなオープニングSEが流れ、続いてアリーナに無数の桜吹雪が降り注いだ。瞬間的に幻想的な世界を創り上げる辺りはさすがだなと思っていると、突然SEが和太鼓を使ったアッパーなものに切り替わり、ドラムセット後方に組まれたサブステージにポップアップでメンバーが登場。大歓声が湧きあがり、ライブはレトロ・テイストを纏った「貴女ノ為ノ此ノ命。」から始まった。
1曲目からステージを行き来して瞬発力を活かした歌声を聴かせるRUKIを軸に、華やかさを振りまきつつキレの良いサウンドを紡いでいくメンバー達。衣裳こそ最新の近未来感とエレガントさを併せ持った白装束といういで立ちながら、ここ最近のヘヴィ&ラウドなthe GazettEとは雰囲気が全く違う。
“おおっ!”と思ってステージに見入っている内に、凝った構成でサイズも長い曲にも拘わらず、「貴女ノ為ノ此ノ命。」はアッという間に終わってしまった。
その後も「舐~zetsu~」や「十四歳のナイフ」「センチメンタルな鬼ごっこ」といったアップテンポの初期曲を続けてプレイ。疾走感や“尖り”、そこはかとない和テイストなどを打ち出した楽曲を続けて聴かせるthe GazettEを見ていると、こういう音楽性から始まって現在のヘヴィネスへと辿っていったことが不思議な気がしてくる。
なぜなら、当時の楽曲も良い曲が多いし、バンドの個性にもフィットしていて、文句なしといえるカッコ良さだからだ。この路線を突き進んでもおかしくないのに変わっていったというのは、いかにもthe GazettEらしいなと思わずにいられなかった。
「OK、代々木! 楽しんでるかい? 今日は、お祭りだからよ。ここにいる全員で盛り上がれ! 俺達がどこまでも引っ張っていってやるからな! 気合入れて、かかってこい!」というRUKIの最初のMCが入った後は、客席をアジテートしまくる「Back drop Junkie[nancy]」やハイエナジーな「Sugar Pain」、エモーショナル・チューンの「飼育れた春、変われぬ春」などが演奏された。
the GazettEのライブといえばオーディエンスが織りなす怒涛のリアクションも大きな要素だが、今回のライブは様子が違う。あえて言うと、おとなしい。とはいえ決して盛り下がっているわけではなく、ファンは皆笑顔を浮かべて曲に聴き入り、ステージに見入り、分かるところはフリを付けるという状態で、雰囲気は抜群に良い。
オーディンスがライブを楽しんでいることは「Back drop Junkie[nancy]」で、最初は一部のオーディンスだけが熱くリアクションする状態から徐々に盛り上がっていって、最後は場内が一体になって盛り上がったことからもうかがえた。
翳りを帯びた世界観とRUKIの抒情的なボーカルをフィーチュアした「Last bouquet」とスロー・チューンの「Cassis」をじっくり聴かせた後、メタリックな「COCKROACH」からライブは後半へ。大胆な場面転換がカオスな雰囲気を醸し出す「ワイフ」やパンキッシュに突進する「Ruder」、パワフルな「The $ocial riot machiene$」といったハード・チューンが畳みかけるように演奏された。
1曲ごとにテイストの異なるハードネスを放ちながらボルテージを上げていく流れに身を委ねていると、気持ちが駆り立てられずにいられない。オーディンスの熱気もさらに高まり、場内は“代々木体育館の最後方までヘッドバンギングの嵐と化す”というthe GazettEのライブならではの情景となった。
the GazettEが完全に場内を掌握したことを感じさせる中、本編の締め括りとして「関東土下座組合」をプレイ。彼らのライブの定番で、オーディエンスを完全燃焼させる最終兵器的なナンバーだが、いつものライブとは違って聴こえることが印象的だった。
ここ数年のthe GazettEのライブは世界観の濃い本編を見せた後、華やかなアンコールを経て、最後の最後に「関東土下座組合」を炸裂させる流れが多い。そのため“とうとう壊れてしまった感”があり、場内は暴力的かつ荒れた雰囲気になる。
だが、今回のライブでは盛り上がりにダメ押しをかける極めつけという位置づけだったため、場内は激しいながらも爽快感に溢れた盛り上がりを見せた。今回の「関東土下座組合」を体感して、そういうことだったのかと感じたファンも多かったに違いない。
最新のヴィジュアルでステージに姿を現したこともあり、大日本異端芸者を感じさせるライブをするのかと思いきや、終わってみれば初期曲のみという大胆なライブを披露したthe GazettE。
オーディンスにとって馴染みの薄い楽曲を並べた構成で、代々木第一体育館を埋めたオーディンスを熱狂させたのは「凄い!」の一言に尽きる。このことは、初期や中期、現在といった時期に関係なく、the GazettEが常に魅力に溢れた存在であることの証といえる。
2015年8月にアルバム『DOGMA』をリリースした後、1年以上に亘って精力的にライブを行って最新形のthe GazettEを見せつけたうえでの今回のライブという流れも功を奏したと思う。
双方を同居させたライブではないにも拘わらず、【大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」】は、彼らが歩んできた15年間を感じさせるものになっていたからだ。
ダブル・アンコールに応えて「未成年」を聴かせた後、感極まった葵とREITAが涙を流す姿と共に語られたメンバー全員の言葉を最後に記す。
「ここに至るまでの道は長かった。葵が号泣するのも無理ないなと思う(笑)。良い景色を、ありがとうございました。僕もずっと泣いていたんです、ライブの後半は(笑)」(麗)
「いろいろやって来た中で“大日本異端芸者”はthe GazettEの時代の1ページで、そういう1ページが積み重なって今に繋がっているんだなと、ひしひしと感じました。それと同時に、ライブ中にRUKIも言ったけど、繋がることが出来たのは、みんなのお蔭だと思っています。みんながいないと、今俺らはここにいないので。これからも、みんなと一緒にthe GazettEを大切に守っていきたいと思います。ありがとうございました」(戒)
「泣いてねぇし(笑)。でも、本当にこいつら(メンバー)が大好きだなと思って。こいつらと一緒にバンドをやって、みんながいて、僕は本当に幸せだなと思いました。本当に、ありがとうございます。これからも、どうしようもないヤツらを、よろしくお願いします」(葵)
「お疲れ様でした。本当に、あの……(涙)一つだけ……本当に、ありがとうございました。お疲れしたぁ!!」(REITA)
「(REITAを見ながら)めっちゃ胸がキュンとしますよね(笑)。いや、さっきからこいつ様子がおかしかったんだよ。ずっと黙ってるから。でも、5人とも思うところがあったと思いますし……あれっ? (泣き続けるREITAや、それを気遣うメンバー達を見て)かわいいヤツらでしょう?(笑) 自画自賛するわけじゃないけどさ、中々いないぜ、こういうバンド。15年もやって来ているのに(笑)。そんなthe GazettEですが、俺らは今日見せたようなところから現在まで続いていて、さらにカッコいいことをやっていきます。まだまだ15年だと思っているので、これからもついてきてください。今日は、ありがとうございました! 愛してるぜ」(RUKI)
15周年ライブを経た今後のthe GazettEにも、大いに期待したいと思う。
TEXT:村上孝之
[SET LIST]
M1 貴⼥ノ為の此ノ命
M2 舐〜zetsu〜
M3 ⼗四歳のナイフ
M4 センチメンタルな⻤ごっこ
M5 Back drop Junkey(nancy)
M6 Suger Pain
M7 蜷局
M8 飼育れた春、変われぬ春
M9 Last bouquet
M10 Cassis
M11 ザクロ型の憂鬱
M12 COCKROACH
M13 ワイフ
M14 Ruder
M15 The $ocial riot machine$
M16 関東⼟下座組合
EN1 泥だらけの⻘春
EN2 ⾚いワンピース
EN3 春ニ散リケリ、⾝ハ枯レルデゴザイマス
EN4 ☆BEST FRIENDS☆
EN5 LINDA〜candydive pinky heaven〜
W.EN 未成年
【INFORMATION】
■the GazettE LIVE
HERESY LIMITED TOUR17 十五周年記念公演 大日本異端芸者『暴動区 愚鈍の桜』追加公演
04.12 (Wed) Zepp Tokyo OPEN17:30 / START18:30
04.14 (Fri) 仙台PIT OPEN17:45 / START18:30
04.20 (Thu) Zepp DiverCity(TOKYO) OPEN17:30 / START18:30
04.24 (Mon) Zepp Nagoya OPEN17:30 / START18:30
04.26 (Wed) Zepp Osaka Bayside OPEN17:30 / START18:30
■LIVE IN SUMMER 17 BURST INTO A BLAZE 3
[日程]2017年8月19日(土)
[会場] 富士急ハイランド・コニファーフォレスト
[開場 / 開演] 16:00 / 17:00 (仮)
[チケット料金] 全席指定 ¥8,000-(税込) ※3歳以上有料
[チケット一般発売日] 2017年7月19日(水)10:00
【 the GazettE OFFICIAL WEBSITE 】
http://the-gazette.com/