10月10日(水)に、十執念を記念したフルアルバム『死期折々』を発売するマイナス人生オーケストラ。10月から11月にかけ、彼らは東京は高田馬場CLUB PHASEで、大阪は江坂MUSEを舞台に「誤重の答」を計10本主催する。マイナス人生オーケストラとは、どんな魅力を持ったバンドなのか。さっそく4回に渡り紐解こう。

撮影：山内洋枝 / インタビュー：長澤智典
Photographs by Hiroe Yamauchi / Interview by Tomonori Nagasawa

 

僕らの所属している寺子屋自体が、ちょっと変で特殊な事務所ですからね。

 

――10月10日に十執念を記念したアルバム『死期折々』を発売します。このインタヴューを行っている時期は…。

栗山"H∧L"ヰヱス　まだ、バリバリとアルバムを制作中の時期です。
 

――マイナス人生オーケストラって、もう10周年を迎えるんですね。

栗山"H∧L"ヰヱス　そうなんです。意外と活動歴が長くて。ただ、メンバーが固まってからは、ようやく1年半くらいなので、まだ新人バンドです。
 

――マイナス人生オーケストラって、いろんなジャンルのイベントに出ていましたよね。

緇屋ゆっけ　いろんなところに出てましたね。

栗山"H∧L"ヰヱス　ヴィジュアル系だけじゃなくて、パンクイベントやアイドルイベントにも。しかもズーッとヴィジュアル系スタイルのまま、いろんなイベントへ出させていただいてました。
 

――それだけフットワーク軽く出来るのが強みですよね。

栗山"H∧L"ヰヱス　そうですね。他のジャンルのイベントに出ても、お客さんたちもぜんぜん楽しんでくれてますし、今でも企画によっては他ジャンルの人たちとも対バンするように、そこはやぶさかではございません。
 

――むしろ、ヴィジュアル系の中でも特殊な色を放っています。

栗山"H∧L"ヰヱス　僕らの所属している寺子屋自体が、ちょっと変で特殊な事務所ですから。
 

――寺子屋さんへ所属してから、もう…。

栗山"H∧L"ヰヱス　3-4年は経ちましたね。意外と長いよね。

緇屋ゆっけ　長いね。

 

 

 

まるでジェンガみたいなギリギリのバランスで成り立っているバンドなんです。

 

――マイナス人生オーケストラの楽曲ってつかみがありますよね。歌ってる内容はちょっとヤバいですけど（笑）。

栗山"H∧L"ヰヱス　そこにはアドバイザリーがついちゃいますね（笑）。

生虫　フハハハハッ!!!!!
 

――えっ、今の笑うとこ?

緇屋ゆっけ　生虫は葬式の場でさえも笑ってしまう奴なんで。

栗山"H∧L"ヰヱス　お坊さんがお経をあげてるときに、どうしようもなくわらけてくるという。

生虫　スイッチみたいなイボを発見してしまったんでね。フハハハハッ。社会性が備わってない。

緇屋ゆっけ　まったく社会性の備わってないドラマーです。
 

――生虫さんって、バンド内でも特殊な存在の方?

緇屋ゆっけ　そりゃあ、特殊な存在でないとマイナス人生オーケストラでは活動しないから。

栗山"H∧L"ヰヱス　うちのメンバー全員、別方向へ特殊なんで。パラメーターがガッタガタな5人が集まり、ガッタガタ具合でなんとかようやくバランスが取れてる、まるでジェンガみたいなギリギリのバランスで成り立っているバンドなんです（笑）。
 

――抜き方次第では崩れてしまいそうな?

栗山"H∧L"ヰヱス　そうですね。

緇屋ゆっけ　むしろ、それを楽しんでますからね。

 

 

 

曲を作り始めたときから、歌詞で人を殺してたので…。

 

――10年間活動をしてきたということですが、音楽性もどんどん変わってきているのでしょうか?

栗山"H∧L"ヰヱス　変わってきてるというよりも、もともと幅広いというか。「なんでもやりたいよ」というスタンスなので。ちょっとお洒落なシャッフルビートをやってみたり、ヘヴィなのをやってみたり、テクノポップみたいなことをやってみたり、アコースティックをやってみたり。その辺のこだわりは、とくに無くやってます。
 

――その中でも、ずーっと貫いていることもあるわけですよね。

栗山"H∧L"ヰヱス　コンセプトは結成当初から変わらず、「明るい音楽に暗い歌死(歌詞)を乗せて」というところなんですけど。まぁ暗い曲調もありますが、基本、歌詞を永遠に暗くするのはまだ貫き続けてますね。初期よりも、今のほうが暗さは割と掘り下げてる気がします。
 

――どんどん人の恥部や心の痛みをえぐってしまいたくなる?

栗山"H∧L"ヰヱス　そうですね。しかも、心の闇を掘れば掘るほど、その掘り方(表現の仕方)に最近は工夫が出てきています。温泉を掘ってみたり、モグラのような穴を掘ってみたり。こんな掘り方もあるぞと発見しては、毎回やってます。
 

――でも、なぜそういう暗い気持ちを描こうとしたのでしょうか?

栗山"H∧L"ヰヱス　なんででしょうね。もう、バンドを始めたときからこの調子だったので。曲を作り始めたときから歌詞で人を殺してたので…。もとはる、なんでやと思う??

矢沢もとはる　当時はすごかったですよ。10年前…ぜんぶまわりは敵みたいな感じでギラついてて。

栗山"H∧L"ヰヱス　触れる者みんな傷つけて。

矢沢もとはる　そう、大阪のジャックナイフという名前が轟いてました。

緇屋ゆっけ　もっさん、適当にしゃべってるってはっきり言ってくれ。

矢沢もとはる　適当にしゃべってます（笑）。

栗山"H∧L"ヰヱス　迷言が出た（笑）。
 

――それくらいヤバい感じのバンドなんだ。

栗山"H∧L"ヰヱス　……。歌詞は、頑張って書いてます。毎回ショートショートの物語を書くような感じで書いてます。
 

――そういう内省的な歌詞を書くことへ惹かれるのは、自分もその想いへ何かしらシンパシーを覚えるからなのでしょうか?

栗山"H∧L"ヰヱス　あー、そうだと思いますよ。世の中、ズーッとあっぱらぱーで「楽しい楽しい」な人たちばかりではないと思うので。少なからず、誰しもがほの暗い感情を持っている。僕らはそこを表現していれば、その感情に上手くひっかかってくれたらというか、聴いた人なりにリンクする部分を見つけてもらえたら、きっとマイナス人生オーケストラのことを面白がっていただけるんじゃないかと思っています。

 

 

 

ポーズを取れないひゃははははっ（笑）。

 

――これまでもマイナス人生オーケストラは、いろんなテーマを持った作品を作ってきましたよね。

栗山"H∧L"ヰヱス　フルアルバムやミニアルバムごとにコンセプトを掲げて作ったり。この間も、『その心は。』というアルバムを通して一つの物語を描けば、今回のフルアルバム『死期折々』もコンセプト作品で、1月から12月まで毎月に割り当てた曲を書いています。
 

――テーマ性のあったほうが表現しやすい形でしょうか?

緇屋ゆっけ　そこはどうなんだろうね。

栗山"H∧L"ヰヱス　 面白いのが好きやから、やっぱそういうのがあるとちょっと楽しい気持ちはありますね。

生虫　アハハハハッ。

栗山"H∧L"ヰヱス　何?、真面目に話してんのに、何??

生虫　真面目な話を真剣にやっとるから、なんか笑けてくる（笑）。

栗山"H∧L"ヰヱス　僕ら、根っこは暗いんですけど、面白いことや楽しいことが好きなので。その辺が楽曲にも、ライブにも反映されてるんだと思います。
 

――みなさん、普段から面白い物事に対してのアンテナは敏感な人たち??

栗山"H∧L"ヰヱス　うちのメンバー、割と笑いのアンテナは張ってるほうじゃないかな。メンバー内でも、笑いどころが生まれたら、すぐにいじったろみたいなところがあるよね。

緇屋ゆっけ　ありますね。そこは逃さないみたいな。

栗山"H∧L"ヰヱス　うちのメンバーは、そういう隙をよく見せがちなんで。お互い隙を見つけては突っ込んでゆく感じです。

緇屋ゆっけ　そうっすね。

生虫　インタヴュー前に撮影をしてたんですけど。ベースの小川の撮影してるところを見てるだけでも、面白いふひゃひゃひゃひゃ（笑）。

小川万次郎　身体が固いんですよね。

生虫　ポーズを取れないひゃははははっ（笑）。

小川万次郎　しなやかなポーズを取れないんですよ。

生虫　でも、頑張って格好をつけてたら、それはそれで面白いし、笑っちゃいますね。
 

――生虫さん、いつも楽しそうでいいですね。

小川万次郎　つねに爆笑バリアーを張ってるからな。

生虫　真面目な話してるときほど、笑ったらあかん空気やと思ったら、つい笑ってまうな。

栗山"H∧L"ヰヱス　わかる、わかる。

緇屋ゆっけ　だから、不謹慎なことでも笑ってしまうんだよね。

★第2回は10月10日(水)更新予定！club Zy.チャンネルでは10月4日(木)から先行配信。
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