INTERVIEW

清春 ロングインタビュー 第2回 「音楽をやめていたら若くいようとか思わない」

清春


清春というアーティストは誰にも似ていない。黒夢、sadsでヒット曲を放ち、男性ファンにも熱く支持される一方で、2003年には清春としてソロデビュー。バンドでの攻撃的でひりひりした側面とは異なるアンニュイで大人な世界観を打ち出した。また今でこそ珍しくないことだが、ファッションリーダーとしても定評があった清春は自身のブランドを早くから立ち上げ、ブランドオーナーとして活躍。近年では彼の音楽に通じる空間を具現化した会員制のバー「BABYLON TOKYO」のプロデュースも手がける。多岐にわたる活動にも関わらず、“清春”は“清春”だ。バンドであろうがソロであろうがアーティストイメージに全く手垢がつくことがなく、広い世代の後輩からリスペクトされ続けている。昨年の10月に50才の誕生日を迎えた清春がシーンでサヴァイヴしてきた視点とそのバランス感覚に迫る。


インタビュー:山本弘子
Interview by Hiroko Yamamoto

カメラマン:宮脇進 / ヘアメイク:諏訪内めぐみ
Photo:Susumu Miyawaki / Hair&Make up:Megumi Suwanai


 

■音楽をやめていたら若くいようとか思わない

 

——もちろんです。後輩のミュージシャンは清春さん世代のミュージシャンがあまりに変わらないのを脅威に感じている人も多いと思うんです。今も華があってオーラがあって、それが生き残っている理由なのかもしれないですけど「昔はカッコよかったのに」っていう人が少ないですよね。

清春:僕に関して言えばもし音楽をやめていたら、痩せていようとか若くいようとか思ってないと思うんですよ。やってるから仕方なくなんじゃないですかね(笑)。これも年齢とのバランスなんですけど40才ぐらいだったら「まだ頑張ろう」と思うんですよ。今はあきらめとの戦いというか「ここはあきらめよう」、「ここはまだキープできる」って。何を捨てるかですよ。
 

——そこもバランスですね。時間に逆らって全てを手に入れられるわけではないですものね。

清春:ないし、僕らはステージに立っている側なので「あの人、変わらないよね」とか「変わっちゃったよね」って言われますけど、そう言う人は昔からずっと見ているわけで、その人たちも変わっていると思うんですよ。僕らは時間の経過を阻止できると思われていて期待に応えられる人も応えられない人もいる中、キープできている人が「変わらないよね」って言われるという。
 

——期待を背負って変わらないでいるって想像以上に凄いことだと思うんです。走っているかもしれないし、食事制限しているかもしれないけど、それを見せない美学を含めてカッコよさに繋がっているのかなと。

清春:ホントはそんなことしなくていいんですけどね。例えば沢田研二さんの容姿は変わったけれど、なぜああいうふうにいられるかというと“俺は歌なんだよ”って強烈なプライドがあるからですよ。勝手な想像ですけど“外見なんかいいじゃない? だって俺は歌手なんだから”って思ってらっしゃるんじゃないかなと。
 

——ジュリー(沢田研二)は清春さん原点のスターですよね。

清春:海外のミュージシャンは太ったりするのは普通だし、日本人は外見で見る人種というか、極端な言い方しますけどだいたいの人は本当に音楽を聴いてないと思うんですよ。聴いてたらルックス関係ないでしょ? って。


——ルックスと音楽が合わさっての魅力もあると思いますが。

清春:ルックスが良くて歌が上手いっていうのは世界的なロックスターの何人かに1人の確率だと思うんですよ。デヴィッド・ボウイは69才で死んじゃって、「死ぬまで綺麗だったね」って言われたけど、それでも晩年はちゃんと美しく老けてましたからね。ただルックスはもちろんファンはみんな彼の音楽を愛しているわけですよ。マイケル・ジャクソンもそう。美しいのはプラスαではあるけれど、最後に残るのは歌と世界観。聴く人の人生を変えちゃった人が残るわけで、僕のファンでもそういうことを感じて聴いてくれる人は全体の5%ぐらいでしょうね。
 

——そ、そうですか?

清春:今いるファンという意味ではなく、僕が発信した今までの音楽を通り過ぎた人たちの5%です。旬が過ぎたら聴かなくなったり、新しい世代にどんどん流されていったりするわけで。もしかしたら僕がそれほど強烈でないせいなのか、そういう土壌の中で育ってしまったのか、僕らがリスナーをそう育ててしまったのか、音楽シーンの在り方なのか理由はわからないですけどね。例えば今日、錦織選手の試合を見てたんですけど、むちゃくちゃ接戦になった末に勝ったんですよ。そうすると僕みたいなエセファンも“おっしゃあ!”ってなるわけです。技術も精神力も含めて強かったら勝てますよね。けど、ミュージシャンはいい曲を作ろうが歌がうまかろうが勝てるとは限らない。
 

——勝敗がハッキリ出るスポーツとは違うというか、いろいろな要素が絡みあっていますからね。

清春:日本の場合、戦略やヴィジュアル、キャラクターも大事になってくるんですが、肝心の音楽を聴いている人は悲しいかなその全体の5%だと思っています。
 

——いつ頃からそういうふうに考えていらっしゃるんですか?

清春:30才ぐらいからそう思ってます。この先、何才までやるかわからないですけど、本当に僕の音楽を愛してくれて歌詞を愛してくれてずーっと聴いてくれる人の割合はそれぐらいかなと。でも、その5%のこだわりで僕らは続けられるっていうことでしょうね。
 

——ある意味、引いた視点で多角的に見ていますよね。“俺、カッコいい”っていう感覚じゃなく、もっと醒めているというか。

清春:50才で俺はカッコいいとか思ってたらバカだと思います(笑)。自分が劣ってきたことをちゃんとわかっていないと継続できないと思う。僕に限らずCDが100万枚売れている人も5%ぐらいだと思ってるんですよ。人口の中の100万人が買っていてライブに来る人はもっと少ないだろうし、しかも長年追ってくれて死ぬときに曲を聴きたいぐらいに思う人となると5%いるのかなって。でも、その5%をキープできる人が残っていくと思うですよ。シーンから消えないで残っている人はその5%を大事にしているっていう意味なんですけど。
 

——なるほど。日本独特のシーンがある中での戦いがあるわけですよね。

清春:邦楽には邦楽の良さがあって洋楽には洋楽の良さがあると思うんですが、僕はやっぱり洋楽のほうが優れていると思うんですよ。ファッションにしてもそうですけど、世界で戦える日本のブランドって少ないですよね。英語っていう言葉の壁があるので音楽はファッション以上に不利だと思いますけど。
 

——ファッションの話が出ましたけれど、清春さんはかなり前に自身のファッションブランド(Moonage Devilment(通称:MaD))を立ち上げましたよね。

清春:今のブランドの前身の“Charm Cult”を立ち上げたのが約15年前ですね。20代の頃にも1度チャレンジしたんですが、それは内容的に気に入らなかったっていうのもあって、大人になってからやりたいなと思ったんですよね。


——まったく素人なのでわからないながらの質問ですが、ミュージシャンがブランドを立ち上げてビジネスとして成功させるのって難しいんじゃないかと思うんです。そういう才覚があるんだなと。

清春:や、成功しているように見えるだけですよ。
 

——ブランドがなくならずに継続させていることがすごいですよ。

清春:だから音楽とある意味、似てますよね。けど、副業でやれるほど甘くないですよ。僕の場合、ただ洋服が好きで始めたのでソロ活動ぐらいの感覚でしたね。
 

——清春さんの中ではサイドビジネスではないんですよね?

清春:サイドビジネスだったらもっと儲けたいと思いますね(笑)。全然、儲からないですよ(笑)。
 

——ご自身が着たい服が基本コンセプトですよね。

清春:そう。大きな会社だったり、少数でも有能なスタッフがいない限り、好きな洋服を作るってハードルが高いんです。例えば服って4ヶ月前に自分のオンリーショップ以外の全国の卸している店舗にオーダーするんですよ。そのときはサンプル見て「いいじゃん」って思うんだけど、4ヶ月後、商品ができたときにはもう飽きてるんですよね。20~30型あったとして気に入るのは1型とか、そういうレベルなんです。逆に展示会のときに“この服、どうかな”と思っていたものが4ヶ月後に完成して「いいな」と思うときもあるし。自分が確認したときにすぐに売れたらいいんですけどね。
 

——タイムラグがない状態で世に出せたらって。

清春:そうですね。音楽は配信になってタイムラグがなくなってきてますけど。洋服は35才で始めたのであと5年ぐらいでやめたいなと思ってますけどね。ちょうど20年ぐらいで。
 

——さっきの活動休止を見据えていた話とも通じますが、やっぱりつねにヴィジョンを持って動いてらっしゃるんですね。

清春:いや、“セイブ・ザ・マネー”的な人生設計じゃなくて、だんだんあきらめていくんですよね。服を着るのは好きだし、どこかとコラボするならいいけどイチから作るのはもういいかな。よくやってきたかなって。
 

——あきらめるというよりも、やりきる感覚なのでは?

清春:うん。終わりは決めておかないと。突然やめるより「あと3年でやめます」とか言っておいたほうが頑張れますよね。
 

——ゴールを決めておいたほうがね。

清春:そう、そう。最後にとんでもない服を発表するとか(笑)。そういうこともできますからね。去年出したsadsのアルバム(『FALLING』)も「最後はやっぱりカッコいいの作りたいよね」って言ってて。「今日でおしまい!」って突然やめるのもカッコいいですけど、2018年で活動を休止しますって予告したほうが自分も「1年頑張ろう」と思えたりするので。「いつまでやるかわからないけど、とりあえず明日は来るさ」的な生き方は40代までで50代は計画を立てていく。でも、それはアンパイ(無難な様の意)という意味じゃなく、ギリギリまでやれるための期間を設けるっていう。
 

——ピリオドを打ってからまた次のことを考えるスタンスですか?

清春:余裕があれば。その中でいちばん続くのは音楽だろうなと思ってますけどね。
 

——清春さんは六本木のバー(「BABYLON TOKYO」)もプロデュースされていますよね。それはどういった立ち位置なんでしょうか?

清春:バーはオープンして今年で3年になるんだけど、六本木の店って2年持たないっていう説があるんですよ。短いと2〜3ヶ月で閉じちゃう店もある中、素人がやってよく3年も持ったなと。そういった意味で3年とか5年で終わりにしてもいい。
 

——個人的な意見ですけど、音楽が中心にあってファッションブランドやバーも手がけていると。だけど、それはいわゆる副業ではなく、清春さんが着たい服であり、清春さんが居たい空間であるわけで1本の線で繋がっているから、そういう生き方が後輩のミュージシャンにリスペクトされているのかなと。つまりクリエイティブであることからはブレていないというか。

清春:そこは人の種類なのかな。同世代のミュージシャンで音楽以外のビジネスをやっている人はいるだろうけれど、僕の場合はカッコよくないとイヤなんですよね。例えば僕がラーメン屋とかうどん屋やってたら明らかに「それ商売じゃん」って感じじゃないですか(笑)。

 


 

★第2回は2月20日(水)更新予定!club Zy.チャンネルでは2月18日(月)から先行配信。
第1回第2回第3回

 

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sads 『FALLING』THE LIVE
2019.3.20 RELEASE

PEBF-3223/¥7,130(+税)

■DVD収録内容
2018年11月30日 品川ステラボールのLIVE映像
【特典映像】
2018年12月21日 川崎CLUB CITTA’公演の模様を一部収録

■CD収録内容
2018年12月21日 川崎CLUB CITTA’公演よりLIVE音源を厳選し収録

 

 

●MORRIE ニューアルバム『光る曠野』収録曲に参加

MORRIE NEW ALBUM『光る曠野』収録曲に清春がコーラスとして参加。
また、MORRIE TOUR 2019 ”光る曠野” 3/4(月) 東京公演へのゲスト出演も決定。
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詳細は http://morrie.jp/

 



KIYOHARU 25TH ANNIVERSARY YEARS
debut days『REPLAY』

2月9日(土) 恵比寿ガーデンホール
OPEN 17:00 START 18:00
(問)HOTSTUFF PROMOTION:03-5720-9999

2月15日(金) 梅田CLUB QUATTRO
OPEN 17:30 START 18:30
(問)大阪ウドー音楽事務所:06-6341-4506

3月1日(金) 名古屋ダイアモンドホール
OPEN 17:30 START 18:30
(問)ズームエンタープライズ:052-290-0909

 

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KIYOHARU 25TH ANNIVERSARY YEARS
fc only『愛ノ巣』

3月20日(水) 梅田CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 START 18:30
(問)大阪ウドー音楽事務所:06-6341-4506

4月2日(火) 名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 START 18:30
(問)大阪ウドー音楽事務所:06-6341-4506

4月6日(土) 渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 17:30 START 18:00
(問)HOTSTUFF PROMOTION:03-5720-9999

※FC限定公演。

 

■EVENT SCHEDULE

「GBGB2019」
6月29日(土)、30日(日) 高崎アリーナ

OPEN : 11:00 / START : 13:00 / 終演 20:00 (予定)

■出演アーティスト
6/29(土):ROGUE / SILENT SIREN / 清春 and more
6/30(日):ROGUE  and more

http://gbgb.jp/


 

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